鳥羽徹『天才王子の赤字国家再生術2:そうだ、売国しよう』

 マーデンとの戦争に勝利を収めて一息つくナトラ。しかし、新任の大使が、点数稼ぎのために縁談を考えたところから、妙な方向に転がりはじめる。まだ、話も進んでない状況で、皇女がナトラに乗り込んでくると言う。圧倒的に格が違うにも関わらず前のめりな動きに、厄介ごとの予感をおぼえるウェイン。それは的中していた。


 ナトラの王子という身分を隠して帝国の士官学校へ通っていたウェインと同様に、皇女ロウェルミナも身分を隠していた同級生だった。しかも、士官学校で散々悪だくみを実行した悪友同士。互いの手の内を知り尽くしたウェインとロワは、コミカルな知恵比べに終始することとなる。
 どっちも、策士策に溺れる系の人物であるだけに、楽しい。


 帝国の後継者争いは、三人の皇子で争われていたが、女性のロワもそれに加わることを目論んでいた。実力主義で女性が登用されていた帝国だが、さすがに女性が皇帝となる事は考慮されていなかった。しかし、ロウェルミナは、大陸西方による武力蜂起の動きを自らで解決することで、後継者候補に名乗り出ようと目論んだ。そして、アントガダル侯に予定より早く蜂起させ、それにナトラ軍をぶつけることで果たそうと考えた。
 その目論見は、ウェインが先んじて打った手で封じされる。
 しかし、企みはアントガダル侯爵の息子が、暴走して、いきなりナトラに押しかけてくることで破綻する。


 アントガダル侯の息子グリナッヘの道化ぶりがなんというか。その急死。それを奇貨としてアントガダルに乗り込むウェイン。工作員との戦い、そして、アントガダル侯をつり出して、ナトラ軍・帝国軍の前におびき出しつつ、反逆者寸前での助命。徹底的にアントガダル侯爵の心を折るウェインの陰謀家ぶりが。


 コミカルに、重くなりすぎず、ガチの戦略ゲームをやっているのがおもしろい。
 そして、大陸西方の勢力という新たな視野も。