瀬尾つかさ『魔導書が暴れて困ってます。 1-3』

 これも、熊本地震で平積みしていた文庫ひとまとめで、物置の奥に封印されていた本。2巻だけ、表に出ているという困った状態が長年続いていた本。やっと、一箇所にまとまった。


 親の仕事の都合で、あちこちを転々としていた主人公、謙児は、親が海外に栄転になった結果、南海の孤島の学校六道学園に転入することになる。そこで、魔導書図書館をめぐる事件に巻き込まれた謙児は、自分が、かつて人類を存亡の縁に追い込んだ「邪神の子」であることを知り、否応もなく、邪神の力を統合するレースに巻き込まれることになる。
 『銀閃の戦乙女と封門の姫』や『放課後ランダムダンジョン』と地続きの世界観だけど、謙児たち邪神の子って、クァント=タンの王族たちやあかり、和馬たち異世界系探索者のトップと比べると、どっちが強いんだろう。ゼノのアクタークイーンと互角に戦える連中というのは、少ないようだけど。


 一巻は導入。魔導書図書館に迷い込んだ謙児は、彼を利用した襲撃犯と対峙。伊佐木姉妹とリンクして、魔導書の回収に従事。そのうちに、クラスメイトにして、同じ邪神の子で、幼い頃友達だった卓郎が黒幕だったことが明らかに。そして、直接戦いを交えることになる。
 二巻は、第三協会からのお目付役アンリエッタや勝手に六道島に住み着いた妖精族など賑やかになる一方、二人分の力を手に入れて、トップに躍り出た謙児をめぐって、よそからちょっかいをかけられることに。同じくトップクラスのボルホス・ハドリッド、そして「怪盗」モーリ男爵が戦いながら六道島にやってくる。それは、邪悪な魔導師にいじられて「生ける魔法」と化した邪神の子を倒すために、アンチマジックの力を持つ謙児を引っ張り出す策で。さらに、一難去ったところで、謙児を傀儡化しようとするアンリエッタの罠が発動…
 第三巻は、消滅した第二協会による実験でマナを喰らわないと生きていけない体になった邪神の子の襲撃。卓郎を殺したと誤解された謙児は敵意をまともに受けることになる。すでに13人の子を喰らった強敵だが、謙児、そしてモーリ男爵の正体たるマリー、そして仲間達の協力で、圧倒する。しかし、逃れた敵は、魔導書図書館に突入、そこに保管されていた「ゴロルの瞳」に導かれ、ドラゴン顕現の生け贄にされてしまう…


 とりあえず、イリーナさんがかわいいです。いじられて、いじけてるところが特に。とはいえ、やはり、第三巻でメインヒロインの座を確定させるだけの活躍は必須だった。編集氏の圧力は、正しかったかと。


 3巻で打ち切りになっているけど、結局、邪神レースどうなったんだろう。なんか、おもだった連中が異界に飛ばされて、ゼノの存在を知ったというのが「銀閃」で出てきているから、背景を知って水入りになったのかね。
 地球に侵入したゼノ・アクタークイーンと戦うために共闘するくらいの状況にはなっていたようだが。