渡瀬草一郎『ソードアートオンライン・オルタナティブ:クローバーズ・リグレット 1-3』

 和風VRMMO「アスカ・エンパイア」を舞台に、SAOサバイバーの青年と同じくSAOの事件で家族全員を失った少女が出会うお話。SAOは一巻を読んだだけだけど、それなりに楽しめる。ちょくちょく、知らない人名が出てはくるけど、あんまり物語の本筋と関わらないため読み流せる。
 とりあえず、主人公/ヒロインのナユタさんがいいですね。
 跳躍力特化の戦巫女。楚々とした外見で勘が鋭い。家族をすべて一時に失ったことから、非常にさみしがり屋という完璧さが。個人的に胸はもう少し小さくていいと思うw


 第一巻は出会い。ナユタとコヨミが茶店でお茶していたら、初心者らしいヤナギが店員に道を尋ねていた。彼に声をかけた2人は、和風世界観のゲームで思いっきりミスマッチな「探偵社」が存在することを知り、さらにヤナギがどうしてもクリアしたい「幽霊囃子」というクエストのフラグを建てていたことから、協力することになる。
 それは、ヤナギの亡き孫が制作したクエストで。配信停止から探偵のコネによる調査請負、そして謎解きと楽しく読める一作。
 そして、探偵が悔恨を持っている「親友」とナユタがSAOで死亡した兄が同一人物であることが判明して…


 2巻は、連作短編的なスタイル。「電撃文庫マガジン」に掲載されていたものだそうだから、その影響かな。最初の一話は、仮想空間の豪華ホテルのテストプレイを頼まれた探偵に、ナユタとコヨミがくっついていく形に。と、そこはナゼかAIの従業員がもぬけの殻で。従業員を探していくうちにAIがストライキしている現場に遭遇して。AIが勘違いでストライキを学習するという話が楽しい。
 あと、ナユタと探偵のエロハプニングが


 二話以降は、支援用傀儡「鬼姫」とそのモデルになったマヒロのエピソード。
 山ほどカピバラが群れているイベントで、カピバラの底に埋まっていた鬼姫を見つけたナユタとコヨミは、意識しないままテストプレイを行うことに。
 その後、鬼姫のそっくりさんマヒロから父親の捜索を依頼され、アスカ・エンパイアの開発陣であったこと、犯罪組織に追われて潜伏していたことなどを探偵が明らかにし、マヒロと父親を再開させることに成功。
 つーか、するっとナユタが探偵のもとに通って、食事を作るようになっているのが。まあ、家族を失った少女、親友の妹を突き放すのは無理だよなあ。


 第三巻はナユタが探偵さんを本格的に落としにかかるお話。探偵の会社の部下だのなんだの、世界が広がるのがおもしろい。喪失から、どう回復するか。探偵とナユタの場合は、互いの存在だった、と。
 こちらはさらに連作短編っぽく。第一話は探偵の夏風邪と顧客の会社視察をからめて、ピンチになったときの距離の縮めかたとか、同時に社会の変化を描き出す。思考出力システムいいなあ。あとは、深海メイドカフェがw
 第二、第三話はクエスト「ガッコウ(仮)」のお披露目テストプレイとナユタの探偵さんちお泊まり。給湯器の破損を口実にお泊まりを要求してくる。そして、それを第三者に目撃されまくる探偵さん。あるいはいろいろなSAOサバイバーとそれからどう回復するか。ついでに、主要キャラの制服コスプレ。社員はいろいろ追い詰められていた探偵を癒やしたナユタにめちゃくちゃ好意的。
 そして、最後は銀河鉄道ツアーとナユタの告白。もう、完全に探偵さんが尻に敷かれてるのがw