八月八『悪役令嬢たちは揺るがない』

 とりあえず、令嬢たちが強いお話。「聖女」アイニ・ミッコラにも思うところがあったのか。
 王太子の婚約者セラフィーナさんの横綱相撲。


 聖女が現れ、彼女が王太子に接近して、セラフィーナ派とアイニ派に分かれている状況。セラフィーナがまったく対応しないため、協会派を中心にアイニ派が勢いづいているところで、アイニが直接、セラフィーナにもの申しに来る。そこで王太子とセラフィーナがガツンとやるお話。「王妃とは、国の母です。それ以上に、何が必要なのですか?」で恋愛沙汰を押しつぶす。
 王太子のほうはちょっと隙があったようだけれど。


 で、この一件で覚醒した天才侯爵令嬢ベルナルデッタは家督継承競争に乗り出すし、商売人子爵令嬢サンドラは脳筋婚約者を捨てて、求婚してきたその弟に乗り換え。ガツンとやられたアイニにも、男爵家で庶子として虐げられてきた経験から、社会的平等に対する憧れがあった。しかし、セラフィーナに押し返され、さらに教会の不平等をみて、地力の必要性に目覚めて。というか、エピローグでは、かなり破天荒聖女さまになっているようなw


 後半は書き下ろしで、男性陣の視点から。宰相息女のベルナルデッタ関係者が多いのに対し、脳筋護衛騎士オルヴァはそもそも、一章も立てられない扱いが。まあ、なにも考えていない感じだからなあ。姉さん女房に尻に敷かれて更生するようだが。
 オルヴァの弟が、婚約者を蔑ろにし、剣以外について視野が狭すぎる兄を出し抜いて、思い人を得ようと努力するお話。ベルナルデッタの弟がいろいろと分かっていなかったお話。内心は割と狷介な隣国の公爵令息がベルナルデッタを落とそうと頑張るお話。王太子側から見たアイニの行動。


 ラストは次世代のお話。愛とかないと言いつつも、実は仲睦まじいエーリクとセラフィーナ。しかし、分かっていない連中がいて…
 アイニさん、ずいぶん波瀾万丈な人生を歩んでるな。