野口武彦『安政江戸地震』読了

安政江戸地震 (ちくま学芸文庫)

安政江戸地震 (ちくま学芸文庫)


安政江戸地震にに際して、その事後処理がうまくできなかった徳川幕府は十二年後に潰れた。阪神大震災の今後は、なるほどなお未知数である。だが一般に、巨大災害の後の手当をきちんとやれない国家権力は長続きしない。「しない」のではなく「できない」のであるが、衆人環視のそのできなさ加減は、為政者の意欲の証明であるよりは能力のメルクマールなのである。(p.10-11)

ここのところは非常に同感。あの時に抱いた日本国の統治能力に対する不信は、強まりこそすれ弱まる要因はなかった。最近の政治家の威勢のいい発言も、あの時のことを思い返せば笑止としか言いようがない。
その後の「地震の周期律」についてはちょっと受け入れがたいが、その後は、安政江戸地震の様相がいきいきと描写されていて面白かった。地震被害と地盤の関係、町方の被害の様相、災害対策、打ち続く災害と幕府の崩壊。一気に読んだ。
確かにここ数年の状況と符合しているようで不気味である。これで大不況でも起きたら現在の日本国はひっくり返るかもしれない。
一番興味深いのは、地盤・地形と被害の相関である。まさに江戸の開発で埋め立てられた場所に被害が集中している。阪神大震災でも、軟弱な地盤の土地に被害が集中している。深刻な教訓として、少なくとも私自身の生存には生かさせてもらおうと思う。