岩井勉『空母零戦隊』読了

空母零戦隊 (文春文庫)

空母零戦隊 (文春文庫)



零戦で戦い抜いたベテランパイロットの回想記。パイロット生活の経験が丁寧に書いてあり興味深い作品。戦闘の場面はガダルカナルからラバウルの戦闘と本土の防空戦闘が主。
少し気になったことは、撃墜機数の報告が過大に思えること。これは、著者の責任ではなく、旧日本軍の戦果見積もりの甘さの問題であるが。例えば、204ページから210ページにかけて、戦後の資料をもとに、中部ソロモンの航空戦の状況が書かれている。ここでは、日本軍の戦闘機が自軍の損害の数倍の米軍機を撃墜したと報告され、30機だの40機だの景気のいい戦果が並んでいる。しかし、日米の戦闘機の性能を考えると、そんなに多数の戦闘機を撃墜できたのかと疑問に思う。
どこの軍でも、撃墜機数が過大に見積もられるのは避けがたいことかもしれないが。このあたり、米軍側の資料とつき合わせて検討してみたいところではある。


また、パイロットの養成の話も興味深い。著者の岩井氏は実戦を経験するまでに飛行時間800時間をかけたそうだ。一回の飛行時間が平均2時間とすると、飛行回数は400回。毎日飛んでも、1年以上かかる計算になる。本当にパイロットの養成には時間と資金が掛かるものだと思わされた。日本軍の戦闘機がパイロットの防御まで手が回らなかったのに対し、米軍がパイロットの防御・保護に留意したことは、航空機の補充以上に戦闘能力に影響したのだろうな。


DC-3をぶっつけ本番で操縦させられた話や、末期の特攻の悲惨さなど、印象に残るエピソードが多い回想記だった。