井田茂『スーパーアース:地球外生命はいるのか』

スーパーアース (PHPサイエンス・ワールド新書)

スーパーアース (PHPサイエンス・ワールド新書)

 系外惑星本三冊目。同じ著者の作品を連射中。本書は、地球の数倍から十数倍程度の質量を持つ岩石惑星「スーパーアース」に焦点を合わせている。「地球型惑星」というだけに、生命の存在が期待されるが、そのあたりにもページが割かれている。系外惑星の探査は、比較的小さい望遠鏡でもできて、運がよければ、アマチュアでも大発見が狙えるらしい。特にトランジット観測は、場合によっては0.01等級程度変化するので、それほど大きなものは必要ないのだとか。
 第一章は系外惑星探索の歴史。ホットジュピターの発見から、惑星発見の競争。最初のホットジュピターを発見したマイヨール博士のスイスチームが、その後、ドップラー法の世界最高を誇っていたカリフォルニアのジェフ・マーシーのチームに追い抜かされ、次々と大発見をものにされる。それに対し、別の方法と対象に努力の方向を移し、スーパーアースの発見へと繋げる流れ。
 第二章は、地球型惑星発見競争の流れ。ドップラー法の精度が高まり、どんどん小さなスーパーアースが見つかる流れ。そして、恒星の光量の変化から観測するトランジット法による発見、そしてケプラー宇宙望遠鏡による大量発見。太陽型惑星の4-6割が、公転期間の短いスーパーアースを持っている遍在ぶり、そしてドップラー法とトランジット法から密度を割り出し、惑星の密度には多様性があること。岩石惑星・氷惑星・ガス惑星が他の星系にもありそうだという。あと、ドップラー法で見つかるM型惑星の惑星に近いハビタブルゾーンは、生物にとっては厳しそうな気がする。
 第三章は、スーパーアースの形成についての議論。基本線は、『異形の惑星』や『系外惑星』とほぼ同じかな。水素やヘリウムによる原始惑星円盤の形成、塵が集積し微惑星形成、原始惑星の暴走的成長。ガス消失と原始惑星の衝突による結合というシナリオ。ある程度数が見つかってくると、いろいろと見えてくる部分があるのかな。円盤のガスによる重力相互作用による惑星の落下と円盤内縁付近への原始惑星の集積が、スーパーアースの形成理論として紹介されている。円盤の質量とガスの消失時期が、惑星系の多様性をもたらす鍵だと。あとは、ホットジュピターやエキセントリックジュピターの話。
 第四章はスーパーアースの生命の話。今のところ、ハビタブル・ゾーンの惑星といっても、暗いM型恒星の近傍をまわっている惑星ばかりが発見されている状況だから、なんともいえないような。フレアがやってくるような場所で生命は生き残れるのだろうか。地熱の供給があることを考えると、寒いほうがまだ望みがありそう。あと、そもそもプレートテクトニクスが生物の進化に与える影響や系外惑星ではどの程度プレート活動が存在するのかを明らかにできないと、議論にならないように思う。生物そのものは、わりとどこにでもいそうだけど、恒星間空間を突破して検出するのは望み薄っぽい。有利酸素があるから生物の証拠とはならないそうだし。
 最後は、系外惑星観測の手段として、ドップラー法やトランジット法、重力レンズ法など。
 読むペースが失速して、さらに読書メモを書く気分にならなかったり、ゲームにいそしんだりで、ずるずると一週間ほどかかってしまった。ここのところ、図書館から本を大量に借りまくってしまって、ノルマに追われているのに。結局、改めて自分の言葉で説明するほどには分かっていないということなんだろうな。とりあえず、同じ著者連射はいったん終了と。


 以下、メモ:

 GJ1214 bは地上の口径四〇センチメートル望遠鏡、GJ436 bは口径六〇センチメートルの望遠鏡で食が検出された。これらは、アマチュア天文家が個人でもっていたり、日本の村営や町営の公共天文台が所有していたりするレベルの望遠鏡だ。このようなスーパーアースの内部構造を解明するというような大発見が、予算もたいしてかからない小望遠鏡で成し遂げられるということも系外惑星研究のおもしろさのひとつだ。p.64

 水星や金星の断面積は太陽に比べたら、けし粒のようなものなので、それらの通過中の太陽の減光は非常に小さい。しかし、木星クラスの惑星が食をおこせば減光率は一%程度にもなる。等級でいえば、〇・〇一等級の減光。系外惑星では木星よりも大きなものもあるので、〇・〇二等級程度の減光を示すものもある。
 実はこの程度の減光なら、市販のCCDと数十センチ程度の市販の小型望遠鏡を使えば、アマチュアでも検出可能だ。大望遠鏡にハイテクを駆使した分光装置を装着した大がかりな、ドップラー法での観測とは大違いだ。実際、東工大では学部一年生向けの演習で、系外惑星のトランジット観測を行っている。使う望遠鏡は、東京都心の明かりがこうこうよ照る校舎の屋上の三〇センチ望遠鏡。それでもHD209458 bといったホットジュピターのトランジットはちゃんと検出できている。p.182-4

 知識さえあれば、アマチュアでも意外と敷居が低いということかな。運がよければ、自分で始めてのトランジットが観測できるかもしれないと。

 ただし、非平衡大気は外的な影響によってもつくられるかもしれないことに注意がいる。たとえば、水蒸気に紫外線があたると、水蒸気が分解して酸素が生成する。絶え間なく紫外線があたれば、一定量の酸素が大気中に存在できる。地球においては、その量はわずかだが、M型星のハビタブル・ゾーンのスーパーアースやアースは水が主成分になっている可能性があり、受ける紫外線もきわめて強い。このような惑星ではかなりの量の酸素が中心星紫外線によってつくられるかもしれない。p.166

 うーん、大気に酸素が検出されたから光合成生物キターとは言えないわけか。