連載「航空事故に見る巨大システムの安全」『航空情報』765号、2007.6から

今月の同記事には、航空会社のLCC(ローコストキャリアー)化への懸念が指摘されている。私も、LCCねえ、安いのはいいけど安全性はどうなのよと常々思っていたので、そうだそうだという気分。LCC黎明期のバリュージェットの事例なんかもあるし。
複雑な下請け体制、稼働率アップのためにターンアラウンド・タイムの短縮が目指され整備・サービスにしわ寄せがいっていると指摘。
ボーイングB777の安全設計について、

このシステムは9通りのバックアップシステムで守られているので、1つの不具合では、モニターしている航空会社はパイロットに知らせず、2つの不具合があっても飛ばす。まだ7通りのバックアップが確保されているからである。

なんか嫌な話だな…
安全設計が徹底されていても、人間が作るものである以上、隙があるのではないか。

こうした下請け子会社エアラインの運行現場は極めて時間とコストに厳しく、世界的に拡大中のLCCの実態と変わらない。着陸してから離陸までのグラウンドタイムが切り詰められ、整備やサービスにしわ寄せが行き、安全がおろそかになっている。



最期のほうは、東南アジアで30社ほどのLCCがひしめき合い、インドネシアではLCCの事故が多発していること。ブラジルでもLCCの事故があったこと。中国・インドは急拡大で機材・人員が逼迫し、インドネシア・フィリピンからのパイロット移籍が相次いでいる。ジェットブルー・エアラインの例など、LCCの乗客が空港で機内に閉じ込められる状況が相次いでいるとのこと。
深刻な事故でなくとも、人員に余裕がないだけに、いざというときの対応に不安はあるな。


LCCについては、『東洋経済』の2007/4/7号の「世界で一番信頼できるエアライン」という特集でも取り上げられている。経済週刊誌だけに、LCCに好意的な論調が基本。
ジェットブルーの機内閉じ込めについて、2ページほど割いてある。2月14日の大寒波でケネディ空港が閉鎖された際、乗客が水も食料もなく10時間閉じ込められたそうな。運行も混乱状態で、翌日以降も最終的に1000フライトをキャンセル。危機管理能力のなさを露呈したそうな。急激に業績を伸ばしていた会社だそうで、結構目立ったようだ。