淡路帆希『紅牙のルビーウルフ Tinytales1:クローバーに願いを』

あまり期待していなかったが、意外と良かった。この作者は、こういう日常の感情の交感を描くほうが向いているのではないか。世界を舞台としたファンタジーでは、主人公たちの正義を、より広い枠組みの中で相対化し、そのうえで主人公たちの選択を説得的に描くということがいまいちできていなくてそこが引っかかる。茅田砂胡に近い雰囲気で心配な部分。その部分が必要なくなると、ずいぶんと読みやすくなったような気がする。ファンタジア文庫の編集部はあまり作風の許容範囲が大きくないようだから難しいかもしれないが、現代の、日常生活を描いた作品なんかだと、より良くなるかもしれない。
最初、SF色が強い作品で批判され、その後日常の感情描写を中心にして評価されるようになった橋本紡に近いのかも。最近の作品は読んでいないのだが…