冲方丁『オイレンシュピーゲル弐』

構成が素晴らしい。大規模なテロ活動に対して、チームはバラバラに行動することになり、不安に思う状況。それぞれ無関係に思えた事象が一気に一つの像を結ぶ瞬間の快感がたまらない。副題のFragileがまさにその通り。

中でも国民党は、世界でいち早く超少子高齢化が深刻化した日本と、経済格差が十八世紀のインド並みとなったアメリカでもてはやされた“九州式”と称される都市財政手法を主張。
増加に歯止めのきかない“働けない国民”を助けるのはやめて、社会保障も医療保障もカットし、国民年金も健康保険も破綻しようが意に介さず、徹底して都市開発の活性化のために予算を費やす手法である。(29ページ)

北九州市のことかーーーっ

「“日本式”が適用されるだけだ」
「なんだそりゃ?」
「もとは交通事故死の統計手法だ。二十四時間以内に完全な死を迎えた場合のみ“死”と認められる。それより一秒でも長く生きた場合、国家が統計の責任を持たない、“ただの死”とみなされる。結果、国家にとって、最も都合のよい平均値がキープされ続ける」(32ページ)

このあたりの小さなネタの辛辣さにニヤリとする。