岩間敏『石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」』

石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」 (朝日新書 57)

石油で読み解く「完敗の太平洋戦争」 (朝日新書 57)

題名の如く、日本の石油供給という視点から太平洋戦争を分析した本。エピソードがつながっていくスタイルだが、それだけに門外漢にもとっつきやすい。
本書を読むと、日本がアメリカと開戦をした時点で、すでに負けていたことがよく分かる。
日中戦争にともなう国際関係の悪化と石油供給国との関係、開戦前の国力と石油供給の見積もり。南方からの石油供給が寸断される状況、終戦直前の状況、現在の教訓と語られる。石油供給国とことごとく事を構えて、供給が悪化していった状況がなんともはや… 
石油の供給をめぐる外交交渉や石油からみた真珠湾。人造石油の開発が無駄であったという指摘。レイテ沖開戦では決戦海面を燃料不足が規定したという指摘など興味深い。
少々気になるのは、一次ないしそれに近い情報が、石油関係の報告書、『杉山メモ』、『大本営機密日誌』程度で、あとは著作からの情報であること。これは、著者が歴史学者ではないので、そのようなものかもしれないが。