エリック・エッカーマン『自動車の世界史』

自動車の世界史

自動車の世界史

 ドイツの自動車史家による通史。古代の車両から蒸気機関、現在までを扱う。とりあえず、貸し出し期間が短いので、ざっと読んだだけ。ドイツ人による書物だけにドイツの自動車産業が中心になる。後はアメリカ、フランスあたりの扱いが大きい。ドイツ人の視野に、日本の自動車産業は、1960年代に入るまで全く視野に入ってこないのだなw
 長所としては、特に初期の自動車メーカーの名前や先駆者の人名が豊富に入っていること。これを元に、消えていった自動車メーカーについて調べることができるだろう。初期のトラックとバスの展開についても紙幅が割いてあるのがうれしい。初期にはトラックは不経済なものと見られて、普及が遅れたことが指摘されている。日本では軍用のトラックが自動車黎明期の柱だっただけに意外な感じ。ごく初期の自動車の信頼性や運用コストを考えると、馬車や汽車に勝てなかったのだろうけれど。
 欠点としては、本文そのものではなく翻訳・編集の問題だが、注の参照文献の書誌情報のうち書籍のタイトルが日本語に訳してあること。一般向けの「親切」なのだろうが、文献検索に不便なので原題を載せた上で注記して欲しかった。あと、あとがきによれば最終章の「自動車をとりまく問題 今後の展望」は、原著が1980年までで終っているため訳者が補足したとのことだが、この場合は文責がちゃんとわかるように表記しておくべきだろう。
 図は日本語版で入れたものだそうだが、これは良かった。


 本書とは離れるが、自動車の歴史の本では二輪車と四輪車、それにトラクターの類がそれぞれ分かれているのはなぜだろうか。使われる技術や作っているメーカーが相当違うのは、私のような極素人にも分かる。が、それぞれ内燃機関を動力にするという点では、それなりに関連のある存在だろう。これらを総合的に眺めると、それはそれで新しい展望があると思うのだが。