山内進『決闘裁判:ヨーロッパ法精神の原風景』

決闘裁判―ヨーロッパ法精神の原風景 (講談社現代新書)

決闘裁判―ヨーロッパ法精神の原風景 (講談社現代新書)

 決闘裁判の始まりから衰退に至る歴史を描いた本。読み終わってからずいぶん時間が経っている。
 本書では『ローエングリン』が例に出ているが、スコットの『アイバンホー』など中世を扱った文学には良くでてくる。ただ、19世紀にいたっても、イギリスでは制度として生き残っていたという記述には驚いた。
 「決闘裁判」の淵源である神判の盛衰とその中での決闘裁判の特徴、決闘裁判の隆盛、実際にどのように運営されたか、そして、近代に入ってのその衰退。そして、終章のアメリカにおける自力救済的な法/社会意識を決闘裁判と関連付ける考え方がおもしろい。
 ちょっと感じたこと。決闘裁判が普及しえた理由として、ヨーロッパでは貴族と一般住民の関係が相対的に離れていたのではないだろうか。例えば、決闘で敗れたら領民1000人もろとも飢え死にという事態ならば、決闘裁判に踏み切るのは難しいのではないだろうか。だまし討ちでもなんでもするだろう。その観点からすれば、決闘裁判というある種牧歌的な紛争解決方法は、ヨーロッパの社会構造や自然の相対的な豊かさを反映しているのではないか。
 いろいろ感じたことはあるが、時間が経って忘れてもうた…