羽原又吉『漂海民』

漂海民 (岩波新書)

漂海民 (岩波新書)

家船を住居として移動生活を営なむ人々についての本。これも『世界の酒』と同時に買い求めて、読みかけで放置してあったもの。今読むと非常に面白い。ただし、1960年代に出版された本だけに、随所に古色蒼然とした感じがある。漁業史において、「封建社会」を強調したり。
しかし、今や、これらの家船の人々は消滅してしまっただろうし、なんというか高度成長期以前の日本社会というのは、正直異世界だよなあ。家船で生活していた人々はその後どういう風に生活を変えていったのだろうか。
あと、中国の蛋民については、史家の偏見をそのまま受け継いでしまった側面があるのではないか。貧しさを強調するが、服を頻繁に買わないなど文化的要因もあるのではないか。埋葬や婚礼には金を惜しまないそうだし。
昔は交易にも関わっていたのだろうなとか、遊牧民が農耕成立後にそれを前提に二次的に出現したように、こういう専業海民の類も農耕が前提にあるのだろうななど、いろいろ感想はあるが、頭痛がするので終了。
野地恒有『漁民の世界―「海洋性」で見る日本』(ISBN:9784062584128)が関連しそうだな。(『漁民の世界−「海洋性」で見る日本』野地恒有(講談社選書メチエ)