坂口謹一郎『世界の酒』

世界の酒 (岩波新書)

世界の酒 (岩波新書)

 以前復刊した時に買って、そのまま塩漬け状態だったもの。
 基本的にはヨーロッパの銘酒をめぐる紀行文。イタリア、スイス、フランス、デンマーク、オランダ、スペイン、ポルトガル、イギリス、アメリカに、ソ連と中国の酒に関する情報を付している。
 こうしてみると、フランスというのは酒文化の国だと感心した。フランスの酒の銘柄がはっきりしているのは、単純に酒好きなだけでなく、巧みなブランド戦略も考えなければいけないが。特定の産地の酒を特定の銘柄として確定し、それを守るのは結構難しいだろう。そのあたりが興味深い。
 あと、本書で扱われる視察旅行は1950-1年にかけて行われたが、この時代ならではの記述が随所にあって面白い。例えばヨーロッパからアメリカへはクイーン・エリザベス号、アメリカから日本へはプレジデント・ウィルソン号で、移動しているが、このあたりオーシャンライナーの末期だなあという感慨が。あとは、息子がロシアで行方不明になっている老学者の話とか。
 しかし、これを読んでなんか洋酒の類が飲みたくなった。