山根一眞『メタルカラー烈伝:鉄』

メタルカラー烈伝 鉄

メタルカラー烈伝 鉄

 製鉄・加工関連のいろいろな人へのインタビューをまとめた本。面白い。
 高炉の設置と運転、新技術、環境、鉄製品の加工など。この本がまとめられたのは、2007年の資源景気がたけなわだった頃だが、景気が反転した現在はどうなっているのだろうか。特に、日立建機なんかは苦しそうだ。高炉の建設から運転、どれも複雑な、人に蓄積されたノウハウの塊。しかし、不景気時代に若手が補充されていないだろうし、技能の伝承はけっこう危ういのではないかとも。
 個人的に面白かったのは、「ワイヤーロープ」、「巨大パワーショベル」、「タービン軸の鍛造」のトピックが興味深かった。ワイヤーロープをフックにかける輪(アイ)やロープ同士の結合は鋼線を編み込んで繋げるそうで、それで大重量を支えるというのは驚異だな。鉱山用のパワーショベルも、乗り物好きとしては見逃せない。800トンのパワーショベルというのは一度お目にかかってみたいものだ。ほとんど地上戦艦みたいな世界だろうな。
 発電用などのタービンの軸を鍛造する工場の話も凄い。一万五千トンのプレス機で鍛造する。しかも、厳しい条件で使われるため、少しの不純物も傷も許されない。タービンブレードの方は、飛行機のエンジンがたまに壊れたりして、その厳しさはなんとなく知っていたが、確かに軸の方も厳しい条件に晒されるのは一緒だ。
 あと、高炉鳶の人へのインタビューに出てくる2000-3000トン級、吊り上げ重量1200トンのクレーンというのも想像を絶する。
 現代社会を支える製鉄・製鋼、そしてそれを利用した製品の製造という巨大システムの複雑さが垣間見える。