河合幹雄『日本の殺人』

日本の殺人 (ちくま新書)

日本の殺人 (ちくま新書)

 おもしろい。流して読んだが、もう一度メモを取りながら読む予定。
 日本で発生している殺人について、各種の資料から実態を明らかにしている。
殺人がここ数十年で激減していることや、殺人が起きるのは家族間あるいは密接な人間関係が存在する場合が大半であることなどが明らかにされる。新聞で取り上げられるような事件がごく希少例であること、それをもとに犯罪対策が立案されると大きな歪みをもたらすことになるのが分かる。
 量刑の相場が法の改正を経ず、判例によって厳罰化していくこと。あるいは殺人を犯した人間のその後がどうなるかという話も実に興味深い。更生の一環として。家庭を持たせるというのは、なるほどともった。そういう枷があると、なかなか無茶はしにくい。
 個人的には刑務官の話が興味深い。183ページや210ページで言及されている。とくに後者、刑務官と天皇制の結びつきというのは、まさに昔からある関係だと思った。古くは、検非違使が釈放された犯罪者である放免を部下に使っていたとか、それこそその辺りから語り起こせそう。王権と刑吏の関係。