ラリー・カハナー『AK-47:世界を変えた銃』

AK‐47世界を変えた銃

AK‐47世界を変えた銃

 うーん、微妙。カラシニコフは何をもたらしたか、広い範囲でパッと見ることができる点では、悪くないとも思うが…
 なんというか、カラシニコフほめ殺しに違和感が。確かに、優れた銃であり、訓練をうけていない人間にも使いやすいと言う点で、途上国にばら撒くのに向いていたのだろうけど。M-16にしろ、FN-FALにしろ、十分実用的な自動小銃と言っていいだろうし。メカ的な部分よりも、政治・流通の問題の方が、AKシリーズの拡散に重要だったのは確かではないだろうか。AKシリーズが小型弾薬の導入の方向に進化していったのに対し、イラクで評価されたのは、7.62ミリの銃であると言うあたり、比較の問題と言うよりも兵士の気分の問題なのではと言う感じが。あるいは、5.56ミリが普及して、それへの対応が進んだから、逆に7.62ミリのカラニシコフが威力の点でクローズアップされるようになったのか。想定が違うのだから、なんとも言えないのでは。
 この本を読んで印象的なのは、小火器の拡散に、アメリカも相当深く関わっていること。アフガン周辺や南米での、小火器の蔓延はアメリカの「汚い戦争」が原因。実際のところ、アルカイダにしろ、南米の独裁政権にしろ、アメリカが育てたようなものだし。アメリカの邪悪さというのには、呆れるばかり。アメリカ国内の銃規制も含めて、何を考えているか理解不能。ただ、本書は、アメリカ視点の本なので、ソ連/共産圏がどの程度ばら撒いたのかは、あまり言及されていない。例えば、アラブ圏や南アフリカ周辺などでは、ソ連の軍事援助が小火器の拡散に影響しているだろう。冷戦後は、あちこちの国が外貨を求めて、売りまくった。その結果、世界中にAKが蔓延するようになった。
 もう少し、国際政治、武器の流通に焦点を合わせて論じれば、もっと面白かったのではないだろうか。


 この銃器の拡散という現象については、歴史的な観点からすると、奴隷貿易の時代の現象と似たようなものと感じる。奴隷購入の対価として、ヨーロッパからはマスケット銃が輸出され、その結果、奴隷狩りの戦闘の拡大・地域の不拡散を招いた(『大英帝国の<死の商人>』ISBN:4062581108)。そのような歴史を拡大させたものと捉えることができるのではないだろうか。その点では、世界システム的な観点から見た、「低開発化」「周縁化」という動きの一つの現れとして見ることができるだろう。


 カラシニコフの国際流通については→http://www.warbirds.jp/ansqn/logs-prev/D001/D0000110.htmlも興味深い。特にレス14.