三上延『ビブリア古書堂の事件手帳:栞子さんと奇妙な客人たち』

 しばらく積んでいた本。つーか、三上延氏の本って、ほとんど全部買っている割にはシリーズ全部読破がほとんどないという。どうしてだろうなあ。
 「本を読めない体質」の主人公とビブリア古書堂の店主栞子さんが、一冊の古書をめぐる謎を解き明かしていく短編集。四編から成る。祖母の遺した『漱石全集』の価値を確かめに行くところから、主人公とその母の出生の秘密を明らかにする最初の話から、最後の太宰治の『晩年』初版アンカット本を奪おうとする「大庭葉蔵」との対決まで。日常の話から、最後は殺人未遂へと一気に話の流れが変わる、そのあたりのリズムはうまい。あと、栞子さんの安楽椅子探偵ぶりが素晴らしい。古書に関する知識から、背後の状況を推理する話の組立てが良い。ラストがまたかわいらしい。