川口士『魔弾の王と戦姫 1』

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 (MF文庫J)

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 (MF文庫J)

 『千の魔剣と盾の乙女』が最新刊まで追いついたので、今度はこちらに着手。1年ちょっとで11刷だから、結構売れてるんだな。
 ブリューヌ王国とジスタート王国の合戦に参加した若き伯爵のティグルは、神がかった弓の名手。しかし、剣や槍を尊ぶブリューヌ王国では評価されないでいた。合戦はジスタート軍が背後から突撃をかけて、ブリューヌ軍が瓦解。負け戦の中でティグルはジスタートの総大将である「戦姫」エレンと遭遇し、味方の撤退を助けるために彼女を射るも人間離れした動きで敗れて、捕虜になってしまう。しかし、ティグルの弓の腕を気に行ったエレンに部下になれと誘われることに。
 MF文庫Jらしい、エロハプニングを織り込みつつ、エレンとティグルが徐々に仲良くなっていくありさまや、川口スタンダードの生活感の描写は、相変わらずよい。捕虜生活の中でいろいろな側面を見せるエレンがかわいらしい。一方で、主人公は飄々とした感じだな。あと、ブリューヌ・ジスタートの両王国のグダグダぶりと、その中でアルサスとライトメリッツの主人公たちが治める土地の平穏さが対照的だな。
 ラストは急転直下。ブリューヌの二大派閥に一方の雄、テナルディエ公が景気づけというか、デモンストレーションのためにティグルの所領アルサスを焼き払うべく、兵を出す。ティグルはエレンの兵を借りて、救援に駆けつける。その戦いの中で、家宝の弓が思わぬ力を発揮し、エレンの「竜具」と共鳴し、竜おも倒してしまう。
 結局のところ身代金をはらえなかったティグルはどうなるのかとか、ジスタートの下に入った形となるアルサスの運命はどうなるのかとか、ティグルの黒弓がどんなものなのかとか、いろいろと先が気になる。