古橋秀之『ブラッドジャケット』

ブラッドジャケット (電撃文庫 (0176))

ブラッドジャケット (電撃文庫 (0176))

 ケイオス・ヘキサ三部作の二作目。確か、こっちの方を先に買ったんだよな。それで、おもしろくて、同作者の本を揃えた。


 前作から、時代を遡ったお話。
 心の底に「純粋な攻撃衝動」を秘めた、遺体処理業者ではたらく冴えない少年アーヴィーことアーヴィング・ナイトウォーカーが主人公。ケイオス・ヘキサに吸血鬼ロング・ファングが侵入し、吸血鬼禍が拡散。消滅したケイオス・トライから移住してきた吸血鬼の専門家ヘルシングとその娘、ミラ。さらには、「聖者」ハックルボーン神父や妖術技官ヴァージニア・フォーといった面々が殺しあうお話。
 あるいは、アーヴィング・ナイトウォーカー少佐が、吸血鬼狩り部隊の指揮官になるまで。


 遺体処理業者で働いていた、いかにも人畜無害そうな少年が、偶然、対吸血鬼用のEマグのリボルバーを手に入れる。そこから、母親の吸血鬼化とそれを殺してしまったきっかけ。最下層まで逃れ、ミラと出会い、強盗を繰り返しながら都市外脱出を目論むが、罠にかけられ、別れ別れに。結局、アーヴィーは、名前を譲って、名無しになって、都市外に流れていくわけか。
 バンバン人を殺しまくっている時が、主観的には、もっとも安らぐ時というのが業が深いなあ。


 ハックルボーン神父が強烈だな。元殺人鬼の聖者。救済と称して、人殺しまくりなのが。神の救済と死はたいして変わらないか。しまいにゃ、一度死んで復活してみたり。規格外すぎるインパクト。
 そういえば、結局、人造の神の探求というのが、一貫した背景だなあ。人間がどんなに無理しても、全能の神は無理だと思うが。