「異見新言:底辺への競争:公正なグローバル化で脱却を:中北浩爾」『朝日新聞』2004.12.8、17面

アメリカの「国際公正労働基準」についての論説。アメリカが日本に最低賃金の導入を求めたり、貿易協定の中に公正な労働基準(社会条項)の盛り込みを求めることが、「開かれた国益」であると主張。「他国の労働者の生活水準の引き上げを通じて、自国の産業と雇用を守る」ことが、グローバル化による「底辺への競争」、すなわち国際競争力の維持のために労働条件の切下げ競争、を打破するのに有効であると指摘。
 日本も賃金や労働条件の引き上げのために、他国の引き上げに積極的になるべきであること。同時に、日本もまだ批准していないILOの中核的な条約のうち二つを批准するなど、自らも努力すべきこと。それが「底辺への競争」の逆転に資すると主張。


 もちろん搾取的な労働を支持するわけではないが、社会条項そのものが先進国に有利なのではないかとも思う。先進国に有利だからこそ、推進されるというか。しかも、アメリカに関しては、

 貧富の落差が大きいとはいえ、アメリカの労働者は世界的にみて、高い生活水準を享受している。また、労働組合も強力であり、全国組織のAFL-CIOは、民主党の最大の支持団体として、強い政治的影響力を保持している。

とあるが、不法移民を安く働かせたり、労組に組織されていない労働者はどうなのかなど、故意に空白を作っているように感じる。必ずしも、アメリカが労働問題に対して規範的な国ではない。また、生活水準は、絶対値も重要だが、周囲との相関関係、その国での物価の状態、生活慣習などが重要なのではないか。