斉藤寛海他編『イタリア都市社会史入門:12世紀から16世紀まで』

イタリア都市社会史入門―12世紀から16世紀まで

イタリア都市社会史入門―12世紀から16世紀まで

 題名そのままの本。主に北イタリアの中世都市を対象に、当時の都市の多様な側面を描いた本。めぼしいイタリア中世史の研究者は大概揃っているような感じ。地域の中での都市、景観や地誌的側面、宗教、芸術パトロネージまで目配りしているのが今風。現状の中世史の対象をあらかた網羅している。手ごろな概説書だと思った。
 サヴォナローラあたりが有名な「説教」について、一章設けてあるのが面白い。あと、今の興味では宮廷や芸術パトロネージの章が興味深い。あと、最近盛んになってきた建築のほうからの都市研究(陣内秀信氏のような)との対象のズレが興味深い。「イタリアでは司教座とコンタードを備えたもののみが都市(キヴィタスcivitas)の名に値した」(p.51)そうだが、この定義だと南イタリアの小都市あたりは、「都市」でなくなってしまいそうだ。まあ、現代人がそれを忠実になぞる必要もないのだが(当時の認識は認識として重要だが…)。
 本書のあとがきを読んで驚いたのだが、高橋友子氏は2007年に亡くなっていたのか。そのあたりの事情について疎くなったから知らなかった。50そこそこか…