横手慎二『日露戦争史:20世紀最初の大国間戦争』

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

 ハンディな日露戦争の通史。テンポよく読める。
 著者がロシアの専門家のようで、ロシア側の内部事情に詳しい。両方とも、特に戦争をやりたいわけではなかったのに、相手の意図をはかりかねて、最終的には開戦にもつれ込む。外交の難しさ、交渉事のむずかしさがよく分る。実際に表に現れた状況だけみていると、ロシアが着々と満州を占領しようとしているとしか見えないしな。
 外交問題と首脳部の意思決定について詳しく述べられているので、どのような状況で意思決定をしたのがよく分る。それぞれのアクターが、それぞれの意思で行動していることが浮き彫りになる。特に、ロシア側の分裂状態が、興味深い。穏健派と強硬派がバラバラに行動し、ニコライ2世との関係が影響する。あと、開戦前の段階の準備の差、ロシアが日本側をなめた態度とか。
 あと、日本軍の作戦構想の話も興味深い。比較的小さい目標・作戦を積み重ねていくというのは、第二次世界大戦でも見られる行動様式。東南アジア占領後の第二段階の動きのまずさを考えると、太平洋戦争ではこれがマイナスに働いたのだな。