鳩見すた『ひとつ海のパラスアテナ』

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

 なんかものすごく読み終わるのに時間がかかった。200ページあたりで、物語の推進力が切れた感じがあって、ここを超えるのに非常に苦労した。出だしが容赦のないサバイバルだけに、中盤以降のまったり風味のコントラストがね。まあ、後半は人為的危険が大きくなるわけだが。
 文明が滅亡し、地球全体が海に覆われた世界。旧文明の遺物と自然の産物で細々と人類が生きる世界を描いた海洋冒険小説。あと、百合。一読して、椎名誠の『水域』を思い起こさせる。相当昔に読んで、内容を忘れまくっているのだが。そういえば、『ガルガンティア』も海に沈んだ世界だけど、なんかテイストが違うんだよな。人為・自然が生存を脅かす状況が前面に出てきている点で。
 両親を海賊に奪われ、男装して、残されたパラス号でメッセンジャーをやって生きのびている少女、アキ。生存することしか頭になかった彼女が、嵐でパラス号を失い、漂流、同じく流されてきたタカのアテナに拾われ、二人で旅をする。その間に、「守りたい人」を得て、気の弱い少女が大敵に挑むことになる。
 社会性を得ていく話という感じなのかね。とりあえず、主人公のアキとタカの関係がすごく良い。どちらも、互いが大好きな感じが。純朴で内面はほとんど少年なアキと少しひねくれた美少女タカの、相補う感じが。最終的には、互いに対等に生きるために、別離を選ぶことになるが。
 とりあえず、ドリルマニアの女の子ってのは、微笑ましいですな。