今週の本棚:張競・評 『風俗壊乱−明治国家と文芸の検閲』=ジェイ・ルービン著 - 毎日jp(毎日新聞)

http://mainichi.jp/enta/book/news/20110724ddm015070002000c.html

 著者がまず注目したのは文化情報の流通における新聞の役割である。一口に「治安を妨害し、風俗を壊乱する」とはいっても、基準が必ずしも明確に統一されているわけではない。明治初期の通俗新聞では、性や暴力の描写があっても、勧善懲悪的な儒教道徳さえ振りかざせば、発行禁止を免れることができる。江戸文芸の鑑賞習慣を引きずっていた部分もあるだろうが、書き手と体制側との距離によって検閲の結果が左右される実態が明らかになった。

 今現在、「児童ポルノから子供たちを守る」という名目で、再演されようとしている問題。検閲は過去の問題ではない。規制を推進する側が、まさに「風俗壊乱」というイデオロギーをもとに動いてるのが見えるし。