ジョー・ホールドマン『終わりなき戦い』

終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))

終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))

 リョナードスーツがらみで言及されていたので、手に取って見た。
 こう、なんとも言えない虚しさの漂う作品だな。空間の距離の制約によって、全体像が見えない戦争。その中で、ひたすら訓練と意味があるかどうか分からない戦いを繰り返して、死んでいく。やはりベトナム戦争を思わせる話だな。ウラシマ効果で、一回戦いに行くたびに、地球では何百年も過ぎて、社会は変わり、兵士たちは取り残されていく状況。結末のトーランとの千年戦争が、コミュニケーションのギャップで止まらなかった戦争で、その始まりは虚偽だったと告げられるくだり。それらも、ベトナム戦争を彷彿とさせる。ハインラインの『宇宙の戦士』のヒロイズムとは正反対な感じ。消耗度とか、扱いの点では、たいして変わらないのに、ここまでカラーが違うのがおもしろい。
 リョナがらみでは、手足を負傷した際にスーツが切断して、止血するとか、強制暗示とか、色々とエグい。このあたり、冷戦の時代って感じだな。訓練中や戦闘でバタバタ死んでいくあたりも。21世紀の対テロ戦争の時代のもとで書かれたならば、もう少し兵士の消耗を抑える工夫をしそうな感じだが。人間がもっとも高価なユニットという扱いで。
 ウラシマ効果で地球の社会から切り離される兵士というと、谷甲州の「航空宇宙軍史」シリーズの中に、そういう話があったような気がするな。