宇野朴人『ねじ巻き精霊戦記:天鏡のアルデラミン6』

 おもしろかったー
 一気に読んでしまった。カトヴァーナのヨブ・トリューニヒトこと、宰相トリスナイ・イザンマ氏大活躍。みんなが求める人気者。本人が出てくるのは、最後の最後なのだが。
 カトヴァーナ帝国の二大軍閥、イグセムとレミオン。そのうち、レミオン派がクーデターを決行。イグセム元帥は辛うじて脱出するも、イグセム派は分断されて、劣勢の状況。一方、クーデターを起こしたレミオン大将側も、皇帝の身柄の確保に失敗し、さらにイグセム元帥が強固な要塞に立てこもって無理攻めもできず、手詰まりに。そこに、イクタ・ソローク改め、イクタ・サンクレイ率いる旭日連隊が割って入って、三すくみに。
 そこに、クーデターを察知した宰相トリスナイが、皇室会議を開くと勅命を伝え、対立を加速させる。皇帝の身柄を求めて、三勢力が南方、旧都があるダフマ州に殺到。狭いところに戦力が集中し、戦闘が発生する。戦闘狂ヨルンザフ・イグセムの跳騎兵部隊との戦いが、大迫力。


 今回は、トルウェイにスポットが当たる。戦闘を怖がり、人を殺すことを躊躇するトルウェイが、自分が戦うことの意義をどう見いだすか。「生き物を殺める」ことをあくまで拒否する人間が、戦場から英雄を追放し、戦場の本質が臆病者どうしの泥仕合であることを明らかにする。ヨルンザフ・イグセムとの死闘の中で、それを見いだす。イクタの目的であるヤトリをイグセムの枷から解放するという目的と共振する。イグセムの否定か。
 あと、兄ちゃん'sをはじめとするレミオン家の人々の株が上がったな。人を殺すことができない末弟を思いやっての厳しい扱いか。まあ、なんか、やり方が体育会すぎるだろうとは思うが。マシューも、今までの修羅場の中で経験を積み、強敵と渡り合う。最初の頼りなさからすると、ずいぶん成長したなあ。のび代が一番大きかったキャラだな。一方で、ハロさんの影がどんどん薄くなっているのですが。なんか、キオカの密偵みたいな立場のようだけど、それがどう生きるのか。


 そろそろ、全体の流れが見えてくる頃なのかね。カトヴァーナ帝国の行く末、キオカとの関係、そして枷に捕われた二人の少女ヤトリとシャミーユがどのようにして枷から解放されるか。一番安定していると思われたヤトリが、友軍との戦争、そして終盤ルシーカとの闘いを経て、自分の生き方に揺らぎを感じる。
 さらに、イクタに思いを抱き、ヤトリとイクタの結びつきに嫉妬を覚えている。ついでに、キオカの大統領の心理操作にかかり、帝国を滅ぼさなければならないと思い込んでいる幼い皇女はどうなるのか。
 狐こと宰相トリスナイの思惑はなにか。さまざまな人材をかき集めているキオカの大統領とは、どう決着をつけるのか。先が楽しみだ。