「ベトナムの稲次代へ:日本のNPO、在来種復元支援」『朝日新聞』11/1/18

 結局、購入した種は、購入費や農薬などが必要で、コストアップすると。コストアップの分だけ収量や売却価格が上がればいいけど、そうでもないってことなんだろうな。
 あとは、やはり、その土地で育てるには、その土地で長らく育成されてきた品種がいいと。地元で育種が盛んになれば良いんだろうけど。
 遺伝的多様性の保持や品種改良の原資としても、こういう活動は応援したいところ。


Seed to Table?ひと・しぜん・くらしつながる?

 ベトナムの農村で、現地の人々と日本のNPOが稲の在来種を復元する活動に取り組んでいる。品種改良の種子におされ、失われそうになっていた。「地域の大切な文化として次世代に引き継ぎ、利用し続けられるようにしたい」と、NPOの代表伊能まゆさん(36)は話す。
 伊能さんは一昨年3月まで日本国際ボランティアセンター(JVC)のベトナム事務所代表を務めた後、NPO法人「Seed to Table」を設立。ベトナムの農村で、地域の環境や文化を大切にしながら豊かに暮らす道を探っている。
 在来種の復元に取り組んでいるのはベトナム北西部の山岳地域、ホアビン省タンラック郡の三つの村。村では収量を上げようと、改良種や交配技術で開発された一代限りの種(F1)を使うようになり、先祖から受け継いだ地域 固有の品種が途絶えそうになっていた。しかし、新品種の普及に伴い、これまでなかった病害虫が発生するなど弊害も出て、再び在来種を栽培しようとする農家も現れた。
 そこでトヨタ財団の助成を得て、伊能さんは2009年11月から稲の復元・記録事業を始めた。改良種との交雑などで種子が劣化しているため、農家が良い籾を選んで栽培し種子を増やす。これを何度か繰り返して純粋な種子を取り戻し、保存する仕組みを作ろうとしている。
 「在来種とF1、どちらかがよいと勧めるつもりはない。村人が選べるよう、選択肢を残したい」と伊能さん。昨年秋に開いた村の会合では、それまでF1を推進してきた行政の担当者が「在来種は収量は低くても自分たちで種を確保できる。在来種も使ってほしい」と発言した。少しずつ関心が高まっている。        (大村美香)