講演 「地震列島ニッポンは、どこにいても本当に被災するのだろうか? :熊本地震の解析から見えてきた心理的バイアス」

 熊大の横瀬久芳氏の講演。心理学的なバイアスの話を枕に、地震に関する広報にいかにバイアスがかかっているかを指摘する話。公的に公開される情報も含めて、現在の体制が、必ずしも減災に結びつかない可能性があると。逆張りすぎて、どこまで信用できるかと思ってしまうが。前震の話しかり、危険評価の話然り。問題点を誇張しているのではなかろうかと。


 だいたい6つのトピックから構成。


 第一は、「前震」の問題。「前震-本震-余震」型の地震は必ずしも異例ではない。阪神大震災東日本大震災もそうだし、2016年に発生した大型の地震でも起きている。それを、「異例」と言い立てるのは、発表する側の面子があると。まあ、現状、頻繁に起きている地震と、大規模な地震の「前震」を識別できないわけだから、なんとも言えない訳だけど。あとから、チェックしたら同じ場所で地震が頻発していたと分かるにすぎないわけで。


 第二は、最大震度や地震回数は、観測点の位置や密度によって変化するもので、必ずしも、客観的な指標とは言えない。阪神大震災後に、内陸の地震計が増えて、見かけ上、震度の大きな地震が増えているように見える側面もある。これは、なるほどという感じだな。マグニチュードで考えるべきと。


 第三は、だいたいのところ、大きな被害地震が起きる場所は、普段から地震が多い場所である。全くランダムに起きるわけではないと。とはいえ、平野と山地の境界部に並んでいるということは、被害地震から無縁の「都市」は存在しないとは言えそうだけど。
 ついでに、熊本の断層の独自推定が紹介されているが、ここはもう少し、詳しくやってほしかったな。


 四番目のトピックは、津波の話。CGで表現される津波の映像が、かなり非現実的と。実際には、波と認識しにくい。これは、よく言われていることではあるな。東日本大震災津波でも、スーっと、水位が上がっていくし。
 雲仙の1991年の噴火では、眉山の隣の七面山が崩れるとやばいぞという話もあったという。いまだに、山体崩壊の危険は残ると。


 五番目が、トレンチ調査の限界。地表に現れる地割れは、途切れたり、枝分かれしたりと、複雑。限られた範囲の調査しかできないトレンチ調査では、途切れて、過去の地震を見逃す危険性がある。
 トレンチによる評価では、数千年に一度とされるが、これは、地層のC14年代測定の分解能の限界でもあるそうな。熊本城の地震被害の記録から計算すると、80年に一回レベルの頻度になると。思った以上に、頻度が高いな…


 で、最終的には、「専門家」も予算や面子などのバイアスがかかるので、受ける側でも、きちんと評価する必要があると。


関連:熊本地震 連載・データ集|KKTくまもと県民テレビ