片平孝『サハラ砂漠 塩の道をゆく』

 マリ共和国トンブクトゥからタウデニ岩塩鉱山を往復する岩塩キャラバンルートを、自分でたどってみた旅行記。現在でも、岩塩が、マリ南部で重要な塩の供給源になっていて、むしろ、高級品として評価されている。それだけに、大量のラクダでキャラバンを作って、輸送することが引き合う。まあ、意外なほど、関わる人間の数は少ないけど。
 現在、マリ北部は、IS系テロ組織だの、トゥアレグ武装組織だのが横行して、とても外国人が近づける状況にないが、2003年ごろは奇跡的に治安が良かったと。一時期は、トンブクトゥも、テロリストに支配されて、古文書なんかが危うい状況にあったというしなあ。そういう、一時的な状況の報告としても、意義がありそう。


 後半の疲弊ぶりが、この往復行の過酷さを物語る。水は途中の井戸で補給した分だけ。タウデニの井戸は、かなり濃い塩水だが、それを飲まなければならない。さらに、帰りは120キロの岩塩の板を運ばなければならないので、ラクダの疲弊も大きい。それだけの、苦痛をしのぶだけの、収益が、輸送だけで存在するってことか。
 タウデニの岩塩鉱山では、濃い塩水しか飲料水がないとのことだが、熱源と水はあるのだから、道具を工夫すれば、蒸留ができるんじゃなかろうか。冷やすのが難しいのは確かだけど。
 あと、ラクダが、あまり飼いならされた生き物じゃないのだなという印象も。なかなか、扱いにくそうだ。