菊地浩之『三菱グループの研究』

三菱グループの研究 (歴史新書)

三菱グループの研究 (歴史新書)

 三菱財閥の出現から、敗戦による財閥の解体、高度成長期の再結集の流れを紹介する。戦後の企業集団形成が主題のようだ。様々な企業が結集する、実利的な理由があった、と。
 三菱が一代で大財閥になりおおせたのは、やはり政治の力が大きいよなあ。土佐藩のリソース、そして、明治維新後は幕府要人との付き合い、戦争への協力がものを言っている。逆に言えば、金もないのに、台湾出兵西南戦争などなど、無駄な戦争をしているものだ。まあ、武士身分の解体には、内戦は不可欠だったのかねえ。
 大学卒業者を早い段階から採用したのが特徴とされるが、これは、やはり学問で出世したテクノクラートという、自身の出自が影響しているのだろうか。他の大財閥は、三井・住友ともに、商家だから、人材養成に対する意識がおのずと違ってくるのだろうな。


 敗戦の結果、財閥は解体。三菱財閥の構成企業も、それぞれ独自に活動することになる。この際、三菱は中央で採用して、配分する形だったため、それぞれの企業の幹部の人的つながりがあったこと。三菱の商号を管理する必要があったこと。さらに、高度成長期の資金需要をまかなうのに銀行による系列化が合理的であった。また、大規模コンビナート開発に共同出資や技術協力の必要があったことなどが、旧三菱財閥企業の再集合に影響した。
 株式持合いの比率が高いのも印象的。99年以後、各グループで持ち合いの比率は下がっているが、それでも、三菱系列企業では他より高いのが、印象的。
 一方で、三菱グループの企業も、90年代以降の経済変動で金融系の企業を中心に再編統合が起こっているのだな。