- 作者: 海野弘
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/04/10
- メディア: 単行本
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マグリブ海賊について、記述が比較的厚いのも、好印象。
一方で、どうしても、「世界史」と称しても、全世界に目が行き届かない。
ヨーロッパ人が関わらない、インド洋や東南アジア多島海の海賊や海民たちは、現代にならないと視界に入らない。あと、権力空白地域の自由空間と言えば、「倭寇」とよばれる人々も含まれそうだけど。
ヨーロッパ内でも、フランスやオランダの海賊は描かれない。本書でも、イギリスの海賊に対抗して、大活躍しているのだが。まあ、このあたり研究の蓄積と研究書が仏蘭語という障壁が作用しているのだろうな。日本国内で翻訳される本は、どうしてもイギリス海賊の情報に偏る。バルト海にしても、中世には私掠船が横行していた海域なのだが。
19世紀以降、ロマン主義経由で、大衆娯楽文化のアイコンとなっていく過程は、いままで、そういう本に手を出してこなかったので、興味深い。海賊的コナン・ドイルか
さらに、20世紀、イギリスやアメリカの電子情報の海賊こと、様々な情報機関。1970年代以降のパンク文化。著作権の「海賊」。
そして、現代の沿岸型海賊たち。本書では、スールー海とソマリアの海賊が、関連の紀行本とともに紹介される。スールー海といえば、イスラムテロリストのアブサヤフが有名だが、あれも、沿岸の外国人を攫って、身代金を要求する、典型的な海賊だしな。門田修『海賊のこころ:スールー海賊訪問記』筑摩書房、1990は、探してみよう。ソマリアの方の、『謎の独立国家ソマリランド』は読了している。