悠十『乙女ゲームは終了しました 3』

 乙女ゲーム世界に劇画世界の住人が紛れ込んでる連作中編の第三巻。前巻から2年開いてるから、次がでるとしても数年後か。
 今巻は、「アレッタの冬休み編」「マデリーンのリベンジデート編」「北からの客人編」の三編。アレッタが一年生を修了して、次の学年に上がるまでの長期休暇中のできごと。


 最初の話は、とりあえず「漢女サーのプリンス」の語感が強すぎる。乙女ゲームのメインヒーローは伊達でなかったw
 冬休み、学園を卒業してベルクハイツ領に常駐して政務の学習に励むことになったフリオと近くにいられると喜ぶアレッタ。しかし、フリオは振られた執務に忙殺されて、会えなくなったり、体調を崩したり。デートに行けば邪魔が入る。けど、食事はともにしたり、関係は進んでいるような。
 同時に、乙女ゲームの攻略対象のうち3人、王子、騎士団長の息子、魔術師団長の息子が再登場。魔術師団長の息子は割と真面目に頑張っていたけど、王子と騎士団長の息子は、派閥活動とそれを隠れ蓑にしたサボりという問題行動を連発。王子は、7割が染まり、3割が改心して逃げ出すというアレッタ直属の漢女部隊に放り込まれることに。最初は見るだけで気絶して体力ゲージを削られていったけど、最終的には、命の危機に瀕して改心。漢女部隊に染まらず馴染んで、部隊の王子様に。他のキャラが劇画戦士化するのに、乙女ゲーキャラを維持できるのがすごいというw




 2本目、リベンジデート編は、マデリーンとグレゴリーのお話。遠距離恋愛の2人の逢瀬。たまの機会なのに、やっぱりお邪魔虫が絡んできて…
 ベルクハイツの男であるグレゴリーの威圧感に右往左往する男性陣と、かわいいわかわいいわでまったく通じないマデリーンの温度差が楽しい。あとは、ファニーのウザさ。
 デートで宝石工房にお出かけしたり、いろいろと予定はあったけど、結局、ベルクハイツを討ち取って名を上げようと無謀な妄想に走った組織にちょっかい出されて、撃滅作戦決行で後半埋まる結果に。隠れ家の組織幹部を、壁を突き破って、アイアンクローするのが最大の名シーンw
 乙女ゲームの攻略対象5人衆のうち、未だ名前しか出てこないシルヴァン・サニエリクが株下がる一方だな。マデリーンの実家のメイドに手を出そうとしていたとか、復縁を望んでいるとファニーの目くらましに使われたり。
 とりあえず、マデリーンの家族から、グレゴリーは好感触で迎えられた、と。




 最後は、アレッタが隣国ルダム聖王国の王位継承争いに巻き込まれるお話。アレッタのパワーを利用しようとハニトラ仕掛けに来た公爵令息が、ベルクハイツ家一同の逆鱗に触れて、やり返されるされるお話。
 アレッタさんが、野生の勘で、最初からハニートラップを看破しているのがなんとも。
 異常に強力な力を持つ「勇者」によって広大な大地を得たルダム聖王国では、勇者と聖女が非常に強く信仰される国で会った。しかし、国王の唯一の子である王太子が死去し、王弟、公爵令息×2の有力候補が三すくみ状態。継承権三位のクリスティアン・ジョーゼフは、アレッタを落とし、彼女を勇者の再来としてボス格の魔物を討伐させ、それによって王位を獲得しようと目論む。
 自分の魅力に自信があったクリスティアンだが、アレッタのベルクハイツ領を守る覚悟、そして、一族の未来をアレッタに託さざるを得なかった親兄弟の苦衷を見誤った彼は、ベルクハイツ家からの反発を買ってしまう。というか、普通にベルクハイツの悪魔にとってはアレッタとフリオに対する教材扱いなのが。
 最終的に、「信仰対象との結婚」という策を、形を変えてやり返されるのが痛快だなあ。女神信仰の核である聖女。その中でも筆頭聖女は、通常その地位にずっと就いていたい人物が就く。しかし、今代に限っては、押し付けられた結婚願望がある女性だった。ベルクハイツは、ルダムの王太子候補のうち唯一の穏健派であるグラハム・ジュールに、ルダム国内の有力者が掴んでいなかった情報を流し、そこからトントン拍子にグラハムと筆頭聖女の結婚話が進行。一気に流れを決められ、クリスティアンはすごすごと帰国することに。