川口慎介『深海問答:海に潜って考えた地球のこと』

 平易な語り口で、海と地球の物質循環について教えてくれる本。
 特に数式などは出てこないけど、生物・非生物問わず炭素循環として見ることができるgC(グラムカーボン)の概念や広範囲の循環を表現するための断面図の利用、海などの物質のまとまり(レザヴァー)とそこから出入りする物質(フラックス)の釣り合い、過去の地質現象と似たような地質現象が現在進行形で進行している「モダンアナログ」などの概念がおもしろい。同時に地球全体で動く量の巨大さ。PgC(ペタグラムカーボン)って、トン単位にすると10億トン=1ギガトン。人類は、毎年、110億トンの二酸化炭素を排出している。これを何らかの形で貯留するにしても、貯留場所がないよなあ。カルシウムと反応させて石灰岩を作るにしても、めちゃくちゃコンクリが余りそうとしか…


 研究現場のお話も興味深い。海水のサンプリングの厳しさ。ニスキン型採水器を複数束ねたCTD多連採水法、まず、強力なバネで閉じられている蓋を開いて、固定するセッティング。その後、採水器が沈んで、引き上げられる3時間の間に1000本ほどの試料容器を用意する。引き上げ後は、それぞれの検査項目ごとに水を分配するけど、これが分析手法ごとにコンタミを防ぐための手法が違うという。これに1時間半ほど。さらに、迅速に行わなくてはならない試料処理に忙殺される。前の調査ポイントから次の調査ポイントまでの移動時間は5時間ほど。休む間もなく、次の作業が待っていて、不眠不休ってなかなかきついな。船員の方は当直制で交代するから、研究者側も交代要員がほしいところだな…
 海底の熱水の話も興味深い。ブラックスモーカーで吹き上げられた熱水は、冷たい海水に急激に冷やされ、混ざり合いつつ、広がっていく。温度的にはほとんど差がなくなっても、鉄やマンガンなどの成分は、普通の海水の10倍ほどの濃度になる。この「熱水プルーム」は深海に4000キロほど広がることもあるので、怪しい地形で当たりをつけて、熱水プルームの濃度を追っていくのが、新しい熱水噴出地帯の探し方なのだそうな。


 後半の熱水、生命の起源、気候工学、海底資源などの具体的な話が楽しい。
 熱水鉱床の「養殖」とか、熱水鉱床にすむ生物の拡散。鎧生物スケーリーフット、色違いがいろいろいるのか。黒い、硫化鉄の鎧をまとっている個体群は、能動的に鉄を摂取して、鎧の結晶を作り上げているのがかっこいい。そして、熱水噴出が止まったら、即個体群絶滅だから、そりゃ、即絶滅危惧種指定になるわな。
 生命の起源の話も興味深い。DNAの系統を追っていく手法とタンパク質などの生成を実験的に再現していく手法の二つのラインで追われている、と。そして、現状、「海底熱水生命誕生説」が有力。しかし、タンパク質を生成する際には、アミノ酸がそれぞれ水を失うことで結合する。RNA加水分解する性質がある。水があること自体が弱点になる。しかし、深海に「液体二酸化炭素プール」が自然に形成されるなら、脱水の問題は解決できるし、実際に、海底に液体の二酸化炭素が存在することも明らかになった。また、他の水の海がある惑星にも、視野を広げることができるという。
 海底鉱物資源としては、コバルトリッチクラスと、マンガン団塊レアアース泥などがある。しかし、堆積物だけに、その資源評価は難しい。場所によって、有用元素の濃度がばらついていて、見積もり通り算出できるか怪しい。調査の密度を上げれば、精度は上がるけど、コストの跳ね返る。機材のコスト、作業員のインフラコスト、環境汚染を防ぐ設備のコスト、底生生物の生息域を破壊するといったコスト・問題があるという。法律的な観点も重要。
 人為的介入で温暖化を妨げようとするのがジオエンジニアリング(気候工学)。アルベドを上げて、太陽エネルギーの吸収を妨げる「太陽放射管理」。大規模な二酸化炭素の発生源で捕集して、大気外に隔離するのが「二酸化炭素の捕獲と貯留(CCS)」。帯水層があれば、可能。そして、大気中にある二酸化炭素を積極的に除去するのは「大気からの二酸化炭素の除去(CDR)」。それぞれ、エネルギーや貯蔵場所で問題あり、と。貯留場所に輸送するためにエネルギーが必要とか、大気から二酸化炭素を分離するためにエネルギーが必要とか。また、海洋という巨大なブラックボックスを利用する場合、本当のもくろみ通りに機能するか、思わぬ副作用があるのではないかなどの、予測不可能性の方が大きくて、現状ではおすすめできない、と。深層水二酸化炭素を押し込んでも、1000年後くらいに、表層に浮いてくるわけだしなあ…


 巻末の文献紹介、いくつか読んだことあるな。蒲生俊敬、平朝彦、高井研の三氏が複数著書紹介。あとは、海洋学関連のいろいろな本が。『海の教科書』は興味あるな。あと、ブルーバックスの大洋シリーズ、『インド洋』も出ていたのか。

 しかし、事態はそれほど単純ではない。北西太平洋海域で実施された総延長3000キロメートルの地震波探査領域のうち、なんと90%以上の海底で、地震波速度の急激な変化が見られないのだ。地殻とマントルがあるからといって、いつもモホ面が見えるわけではない。この「見えないモホ面」の原因は、地殻とマントルの岩石が明瞭な境界を形成せずじょじょに遷移しているためだ、と解釈されている。実際、かつての海底下構造が陸上に露出しているオマーンでの観察では、地殻とマントルとの境界をまたぐように、両者の岩石が混在する領域が広がっている。p.98-9

 実際には、明瞭な線が見えるわけではない、と。

 海に存在する生物の総量は、6PgCと見積もられている。陸の生物の総量は約600PgCなので、海の生物のほうが2桁も少ない。部屋の窓から山を見れば樹木が生い茂り鳥が飛び交っているけど、浜から海を見ても魚影がたまに見える程度だから、生物総量の対比は、直感的には「そんなものかな」という気がする。p.133

 海のほうが少ないんだ。逆だと思っていた。そういえば、樹木みたいな巨大な構造物は海にはないもんな。ただ、毎年の生物生産量はほぼ同等。海洋では、植物プランクトンが猛烈に増えて、急激に消えていく。で、大量の消費者を養っている、と。

 海を飛ぶエアロゾルを観測するには、調査船のような観測基盤が必要となるから、観測できる頻度が極めて限られてしまう。だから、エアロゾルが海に及ぼす影響を評価するには、陸から海へと飛来していくエアロゾルの様子を、海に近い陸上の多くの点で継続的に観測することがキモとなる。ユーラシア大陸と太平洋に挟まれた日本列島は、「エアロゾル海洋学」とも言える研究を樹立する拠点として、絶好の地理的優位がある。たとえば全国津々浦々の高校で、地学演習としてエアロゾル観測が行われ、その結果を集積したビッグデータが構築されれば、世界を驚愕させる研究成果が生み出されることだろう。p.188-9

 そういえば、高校の頃、地学部に所属していたけど、流星塵の観測をやっていたなあ。

 各熱水域では、それぞれ20種ほどの動物が群集を形成している。生物種ごとに見ると、その分布域は地理的に偏っている。たとえばツノナシオハラエビは、大西洋や西太平洋では多くの熱水域で生息が確認されるが、東太平洋ではまだ見つかっていない。これに対し、スケーリーフットは、インド洋の複数の熱水域で見つかっているが、インド洋以外の海では見つかっていない。
 こうした個別の種類の分布をまとめていくと、地球上で500カ所以上ある熱水域の動物群集は、11の生物地理区分に大括りすることができる。それぞれの区分の中にある熱水域間では、動物が往来する頻度が高く、遠い親戚のような関係が構築されている。反対に、区分が異なる熱水域間では、動物の往来頻度はきわめて限定的だ。p.211

 海底の海流に幼生が流される形で、分布が広がっているのだとか。地理区分内の頻度とか、どんな風になっているのだろう。

 これらの元素資源が「できる条件」が指摘しにくいのとは反対に、「できなくなる条件」は明確に指摘できる。仮に、糞粒などの粒子の沈降フラックスが大きいと、価値の高い元素をあまり含まない堆積物が海底にどんどんと積もっていく。さらに、堆積物が元素資源になるには海水から元素を凝集していくプロセスが重要なのだが、粒子の沈降フラックスが大きいと、次から次へと新しい堆積物が積もっていくから、海底で有用元素が表面に凝集する時間がない。p.263

 粒子が供給されやすい沿岸や、表層の生物活動が活発な領域ではできにくい、と。

ふたりソロキャンプ 第11話「さようなら、厳くん」 - ニコニコ動画

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 とりあえず、過去のお話。
 一方、雫のほうにも、謎の男が部屋を訪れる…


 雫のほうが、キャンプで電波が悪いとこに行っていて、返信が滞りがちになっていて、様子を見に差し向けられた兄貴。両親は雫に過保護かあ。そりゃまあ、遅くに生まれた末っ子娘ならなあ…


 で、厳さんと元カノの対話。厳さんの台詞が少ないw
 つーか、厳さんの顔を見に来て、自己完結して、帰っちゃう花夏さん。なんか、離婚でもしたのかね。で、休養がてらの日本で仕事をしていた。
 一方で、サクッと自己完結されてしまった厳さん、キャンプをしてもモヤモヤして。


 厳と花夏のすれ違いというか、若気の至りというか、互いの甘えというか…
 夢にまっすぐ向かっていく花夏に対して、借り物ではないかと自身の「夢」に自信がなかった厳さんは、徐々に互いの領域を離そうとする。それが徐々に亀裂になり、花夏が主役の座をつかんで劇場に来てくれと呼ばれ、厳さんがすっぽかした時に、決裂する。
 厳さん、ひどいよ。
 で、その日、花夏さんは捨て台詞を吐いて、夢を叶えにニューヨークに旅立つ。


 厳さんは言葉足らずで、花夏さんは言い過ぎでモヤモヤしているのね。
 アメリカに戻る航空便に乗ろうとしている花夏。その待合室に、キャンプフル装備の厳さんが駆け付けて、今回は幕。次回の前半くらいは、花夏と厳さんの行きがかりの解消かな。


瑠璃の宝石 第12話 - ニコニコ動画

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 祖父が集めていたものはないかと聞いたら、物置にあるかもと言われた瑠璃。早速、調べてみると、石が入った箱が出現。凪さんと伊万里さんは、鉱物ラジオに対する知識がある訳ね。というか、カードを見て、テンションが上がる伊万里さん。
 しかし、大学組は、締め切り間近で忙しい。
 結局、高校生組で鉱石ラジオの修復に挑むことに。ホームセンターで同級生とも出会って、巻き込むことに成功。


 コイルの巻き直しには成功するけど、聞こえない。検波器の鉱石に方鉛鉱や黄鉄鉱、ジンカイトなどが使えると教えてもらった瑠璃たちは、自分たちが集めた石でいろいろ試してみることに。
 で、ゲルマニウムダイオードで、ちゃんとラジオができあがっていることは確認。
 しかし、最初に入れられていた石で聞いてみたいと言い出す瑠璃。で、検波器の性能としては不安定だから、それを補う方法を考える。で、蓋裏に刻んであった「すおう」の文字をヒントに周防神社へ向かう一同。宮司さんに、奥のご神体の前がよく聞こえるとアドバイスを受ける。そこに、暇ができた凪さんたちも合流。凪さんたちは、ヴェリカードの座標で位置を特定していたのか。
 で、ご神体の巨石の前で、ラジオを聞く。イントロで流れていたオープニングテーマが、ラジオで声も流れるという演出が心憎いなあ。


 声をかけてきた宮司さん、瑠璃の祖父の友達だったのか。一緒に作ったとおぼしき鉱石ラジオを取り出す宮司さんの姿がエモい。


 電波のエネルギーを使用する鉱石ラジオからICカードへの技術の系譜、そして、瑠璃の祖父と宮司さん。気持ちも、技術も、過去とつながる演出がこう、ほんとにね。
 で、次回は温泉?


 しかし、瑠璃と硝子、ずいぶん仲良くなったというか、似てきたというかw
 鉱石ラジオを聞きたい聞きたいと言いだしたとき、すぐに硝子が同調していたり、バス停で必要部品のメモを見たときの距離の近さとか。







サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと #11「わたしの友達」 - ニコニコ動画

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 チェス大会はアバンタイトルだけで終了。ライバル校の先生の台詞でモニカの実力を説明かあ。


 その後は、打ち上げのパーティ。そこで、対戦相手だった他校生とのロベルトに、公開プロポーズされる。モニカの打つチェスに魅せられたという。でかい人が苦手なモニカは逃げ出して、本人は第二王子とシリルに連行w
 しかし、逃げ出したモニカは、バーニーに捕まってしまう。ネチネチとモニカを貶めるバーニー。視聴者的に株が下がるなあ。
 そこにラナ子が割って入る。ラナに対しても、いろいろと吹き込んでくるバーニーを見て、ついにモニカからの決別宣言。
 それに対して、認めないと復讐心が猛るバーニー。自分を先鋒にしろと先生に言い出して…


 今まで下に見ていたモニカが、自分を一気に抜き去って、高みに達したのを受け入れられなかったか、バーニー。人間の器が露呈してしまっているよなあ…


 で、後半。
 選手の交代の手続きに行ったところで、バーニーは引率の教師が別人であることに気がつく。人気のないところで問い詰めると、正体を現した工作員は、竜化の魔術で身体強化を行ってバーニーを追い詰める。そこに、リンから危急を知らされたモニカが登場。水球に閉じ込められるも、無詠唱魔術でデコピンして倒す。
 その戦いの中で、自分が凡人と思い知ったバーニーの険がとれて…
 まあ、バーニーは秀才ってところだよな。人格含めてぶっ壊れ系のモニカと比べたらいけないというか。


 とりあえず、バーニーが口裏を合わせてくれたので、当面、潜入生活は続けられる、と。


 というか、マクガレン先生、やっぱり普通に気づいていたのね…












三山高・ハチフン『SCPって何ですか? 2』

 なんか、2巻目にして、すでにヤバいことになっているような…
 Hさん、1週間の失踪からの、持ってきた原稿の「とまれ」の文字。あげくに、どこ行ってたか、おぼえていないとか…
 で、「原作者」がなにをやろうとしているのか、Hさんには見えて来ている、と。

 つーか、担当さんも、怪しいんだよなあ。


 SCPと言うと、あの報告書文体じゃないとしっくりこないところがあるけど、今度の巻で取り上げられているエピソードは、SCPっぽいかな。
 「ねこですよろしくおねがいします」は、わりと有名なエピソード。
 建物の床下から遺体が発見されるけど、住民にそれらしい人物がいない。あるいは、宇宙生命体との交信といった道具立ては、ネットロアの想像力とは、ズレている感じがする。
 というか、後者のエピソード、子供のお腹のアザからヒトデ型生命体が分裂してきそうだなあ。


 最後のエピソード、標識型オブジェクトというのは先例があるけど、物語の筋立ては、異界に迷いこんだ系ネットロア的だな。キサラギ駅みたいな。

エアコン復活

 昨日、熱風しか出なくなったエアコン、今日、電気屋さんに来てもらったら、普通に冷風が出る。どゆこと。
 昨日は、コンセント何度も抜いたり、ネットで紹介されている方法を試してみたのに。
 基盤が不機嫌だったのかねえ。一日の休暇で復活。
 昼から、気温が30度まで上がったから、助かった。


 アマゾンに発注したハードディスクケース、昨日支払い完了したら、今日到着。
 届くの早いな。明日か明後日くらいかと思ってた。
 あとは、雷サージ対策のコードを買うのみか。

ふじはん『不老不死少女の苗床旅行記 3』

 シリーズも三巻目。
 前巻で、野盗に捕まって、「美の都市に住む」最高位サキュバスアカツキに売られたプルートとパンドラ。
 引き続いて、ハードな責めを受ける。


 裏市場で行われる「異種姦交雑ショー」に引き立される。
 屋敷内での予行練習からの、休みなしで本番。観客の前で、オークと。うれしそうなプルートが、実にいかれてるなあ。
 苗床ものって、交合と産卵のタイムラグが気になるものだが、サキュバスの魔法であっという間かあ。


 その夜、満足したプルートは、脱出を試みるも、結界を破れず、アカツキに捕獲。直接、責められまくる二人だが、プルートの魔力を搾り取りきれず、勝ちをおさめる。
 というか、プルート、逃げる気になればいつでも逃げられるのに、好奇心で残っていたとか…
 で、アカツキも加えて、三人で旅を続ける。


 マジカルジェリーの触手を耳に突っ込まれて、操られるパンドラ回が印象に残る。