明日まで図書館の返却期限の本。借り直したいところだが、予約が入っていて伸ばせないので、一気に読んで、感想も。
安楽椅子地形学者のバーチャル旅。
地理院地図で当該箇所を見ながら、分水嶺を追っていくのは楽しい。けど、さすがに中国地方横断は限界があって、6日目の吉備高原西側あたりから、分水嶺を追えなくなって断念。そのあとは、スピード優先で本を追っていくことに。ほとんど高低差のないところを通るかと思ったら、山地の頂上を通ったり、分水嶺の変幻自在ぶり。
地理院地図って、ズームすると情報量が多いけど、広い範囲を表示すると、途端に情報量が少なくなるのが欠点だよなあ…
蒜山盆地に展開する湖成層蒜山層群が印象深い。火山で分水嶺が付け変わる。ただ、166ページの断面図を見ると、珪藻土の層がかなり高いところまで達しているのが不思議なのだが。
中国地方の中央分水界に多い谷中分水界や片峠を、河川争奪の結果とする考え方に疑問を呈している。
後半1/3程度は、太平洋プレートとフィリピン海プレートによる日本列島に働く東西の圧縮力。それに伴う中国山地の隆起によって、谷が海中から離水したタイミングが、谷中分水界や片峠の存在に影響していると、縷々解説する。しかし、ここいら、ページ数を取っている割に、あまり説得力ないなあ。
プレートテクトニクスを前提としないデービスの地形輪廻の概念とその一部としての河川争奪の議論に問題があることには同意するが、そもそも、「谷」の形成をブラックボックスにしてしまってはお話にならない。そもそも、現状が浸食フロントの前進が想定しにくいと言っても、氷期の海水準が低下している時期に活発に浸食フロントが前進して、海進期の現在は停滞しているだけと解釈もできる。274ページの図ほど、河川争奪は起きていないかもしれないが、起こっていないと説得力を持って解明できていない。
そもそも、100メートル弱程度あった備北層群が、山地で数十メート単位で浸食されているのだから、現在の山地の上にはさらに数十メートルは乗っていて、浸食されているのだから、現在の等高線を無修正で過去に遡らせて、どこそこが陸化したと図を作っても、意味がないのではないだろうか。
あとは、中国地方を重要に走る断層による隆起スピードの変化や火山の影響を考慮する必要があるのではないかとか。単純化されすぎていて、ちょっとなあ。
谷中分水界が海峡だったというなら、どこかの分水界からトンボロの痕跡を検出する必要があるのではなかろうか。
