田中淳夫『だれが日本の「森」を殺すのか』読了

だれが日本の「森」を殺すのか

だれが日本の「森」を殺すのか


供給側の状況、需要側の状況、供給側の動き、需要側の動きの順番の4部構成。
スパスパと手早く、簡単に読める。
いろいろと興味深いところがあって全体を取り上げることはできないが、宮崎の中国への木材輸出と「アトリエときデザイン研究所」のトピックが印象的。
中国への輸出のトピックでは、中国と日本の木材の使い方が相当違っていることが分かる。これを見ると、日本の木材の使用法は、なんというか硬直化しているように感じる。「森林資源を“トロ食い”する日本人」という節があるが、確かにそのように感じる。


次の「アトリエときデザイン研究所」のトピックでは、雑木に付加価値をつけるという点で興味深い動きだと思った。本来、山村は各種の林産品を外部に移出し、それによって経済的に成り立ってきた(このあたり『知られざる日本:山村の語る歴史世界』ISBN:4140910305)。それに代わる林産品として、ひとつこれはありだと思った。ただ、どこでもうまくいくというものでもなさそうだが。


いろいろと状況を打開する動きがあり、それなりに効果がありそうだが、これで山村にどれだけの人間を引き付けることができるかという点で心許ないように思う。
都市へ集中する人の流れを一部分でも変えるには、安定性というか、継続性というか、そういうものに欠けているような印象。物事の変化の芽は、小さいところから始まるというけれど。