- 作者: 横江公美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/08/21
- メディア: 新書
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本書は2004年の出版。当時は、保守系シンクタンクの全盛期といっても良かったと思う。だが、ブッシュ政治が完全に破綻した今の時点から見るとどうだろう。ネオコンは分裂・衰退しているし、これらの言論の拠点となったシンクタンクの信用性にも疑問符が付くのではないだろうか。『ネオコンの真実:イラク戦争から世界制覇へ』(ISBN:9784591077207)を読んで博士持ちがこのレベルの言論かよと唖然としたおぼえがあるが、政治に近づきすぎた学問の問題というか、アメリカの社会科学のレベルへの深刻な疑念というか、そんなものが強力にあるのだが。特に、第5章はシンクタンクの限界も如実に示していると思う。
確かに政府外に、それに対抗できるレベルの政策情報・企画能力が蓄積しているのは重要ではあると思う。日本についても、官僚に対抗できるだけの情報の蓄積が必要だろう。しかし、アメリカのシステムが日本に適合的かどうか。
ものすごく極論に走れば、アメリカの政治システムは基本的に貴族寡頭制的なものである。少なくとも「名望家支配」ではある。産業、政治、学術、官僚のエリートがほぼ一つの集団になっている状況が「民主主義国家」として適切なのかどうか。ここ10年ほどのアメリカの国内政治を見ていると疑問を感じる。金持ちによる金持ちのための政治・制度に対案が出にくい状況。
翻って、官僚、産業、政治のエリート間で人的交流がほとんどない日本の現状のシステムがいいのかどうかも問題ではあるのだが。
アメリカの大富豪の生態については、「ミイラにダンスを踊らせて」(ISBN:9784560038796)が適切だろう。メトロポリタン美術館の内幕本だが、ここに見える大富豪とその生態、特にパトロネージ的行動は、事実上の貴族といった性格を備えているように見える。
エリートが一体化することの問題点は安全行政に一番現れるだろう。アメリカの航空機運行の規制官庁のポストが業界関係者に与えられることによって、安全性が蔑ろにされてきた状況。「危ない飛行機が今日も飛んでいる(上)(下)」(ISBN:9784794208903 ISBN:9784794208910)
以下メモ:
ブッシュ大統領のイラク攻撃の論拠は、九・一一連続テロ事件を再び引き起こさないために、大量破壊兵器を持つ国を徹底的に叩きのめすことだった。つまり、敵をオサマ・ビン・ラディンに限定するのではなく、イラク、イラン、北朝鮮といった「悪の枢軸」国まで対象を拡大し、その一つとしてイラクを攻撃するとしたのである。つまり、戦いによって悪の独裁者から人民を解放し民主主義国家を構築することが、真の目的となる。
この論拠を作っているのがネオコン系と呼ばれるシンクタンクだった。ネオコン系のシンクタンクで最も有名なのが、イラク戦争開戦によって一躍、膳マスコミの注目を集めることになったPNAC(Project for New American Century)だ。一九九七年設立の新興シンクタンクで、会長はウィリアム・クリストル。p.44
ファンタジー。
知的堕落もいいとこ知的堕落だよなあ…
一九七九年にヘリテージ財団に入ったバトラーは、荒廃した都市部を復興させるために、荒廃地区の規制や税制を緩和する必要があるという「エンタープライズ・ゾーン(Enterprise Zone)」構想を発表した。p.94
都市問題関係。メモ。しかし、私はこの方法に反対だ。
この背景からか、中東問題に関するワシントンの二つのシンクタンクが急に関心を集めるようになった。ワシントンでは、イスラエルとパレスチナの代理戦争が行なわれているからだ。学術研究が中心だが、比較的パレスチナよりで平和解決を主張するのが中東研究所(MEI:Middle East Institute)。親イスラエルの立場をとるのは近東政策ワシントン研究所(Washington Institute for Near East Policy)である。p.192
一九九七年、AEIの研究員ダグラス・カービーとカリン・コイルは、「学校の授業として性教育が必要である」と結論づけた研究結果を発表した、この研究では、「コンドームの使い方も含めてエイズにまで言及する性教育」と「全く性教育を行なわずに節制が重要だと説く教育」を、中学生と高校生に行い、そのインパクトを調査したところ、「純潔教育」ではそれほど成果が上がらなかった派、「具体的な性教育」の方は、エイズなどの性感染症や妊娠を減少させるという結果が出た。そこで、具体的な性教育の学校プログラムを提案した。アメリカでは、学校での性教育プログラム実施が奨励されており、すでに一九九七年の時点では二十三の州が学校で性教育を行なうことを政策として明示していた。p.212
メモ。