定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか? (新潮文庫)
- 作者: 三戸祐子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/04/24
- メディア: 文庫
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日本の鉄道の定時運行について、それがどのように形成されたのか、どのように維持されているのかを取材した本。江戸時代にそれなりの時間感覚が形成されていたという指摘や、急激な都市化によって高密度の運行が必要とされたという歴史的経緯。巨大システムである鉄道がダイヤを中心に設計されていることや、遅れの原因となる事象、それに対する対策。さらにはシステムを運用する指令所の職人芸など、平易に解き明かす。
今後の鉄道システムがどう変化していくかという話も興味深い。確かに、艦艇の戦闘指揮システムのように、必要な情報を瞬時に見やすい形で共有できるようになれば、システムの柔軟性は増すだろうな。ただ、前の列車の動きに合わせて動く「列車ロボット」や列車が自ら分岐器を動かすのはどうかなと思う。大規模なコンピュータシステムってどこまで信用できるのだろうか。作る人間がミスを犯す危険を考えると、列車間の距離や分岐装置には十分な対策を盛り込む必要があるのではないだろうか。例えば、分岐器を列車側から操作する場合、同じ線路に列車が入り込まないようにする必要があるが、そこでシステムのプログラミングをミスった場合、それこそ大量の死人がでかねない。そう考えると、なかなか難しそうだと思うのだが。
感想としては、おもしろかった。
以下、メモ:
進路が確保できれば、列車は走れるかというと、そうではない。車両や乗務員の手配がある。鉄道では車両だけでなく、乗務員も、何百キロもの距離を行ったり来たりしている。特に、列車の運転は線との状態と密接に関わっているから、常磐線しか運転したことのない運転士に「中央本線をちょっと松本までやってくれ!」というわけにはいかない。もちろん勤務あけで疲労のたまった運転士を乗せるわけにもいかない。どの車両に、どの乗務員が、いつ、どこからどこまで乗り、どこの駅の詰め所で、どれほどの休息や仮眠をとり、次は、どの駅から、どこへ向かって、どの列車を走らせるかは、乗務員仕業ダイヤや、車両運用ダイヤとして、あらかじめ綿密に計画されている。p.233-4
手間がかかるだろうなあとしか、感想が出てこない。