「観光韓国客に活路 九州経済白書」『朝日新聞』11/2/24

 国内観光、特に九州観光が、韓国中国台湾客に依存するのは、ここしばらくの傾向だが、観光が産業として非常に不安定であるってことは、思い知らされるな。韓国人と台湾人の動きを見ただけでも。
 福島の原発事故の結果、九州の観光地も閑古鳥が鳴いているわけで。昨年は尖閣諸島問題も影響したようだし。リスクヘッジというのも難しい。ついでに言えば、原発事故で、当該国を観光の対象から外すという消費者の判断は、それ自体は合理的なもので、無知と謗ることもできない。

 アジア客、なかでも韓国客を呼び込め。九州経済調査協会が23日発表した「九州経済白書」は九州の観光業界の実態と進むべき方向を示した。国内では少子高齢化が進み、海外旅行はどんどん手軽になる。依存しすぎるリスクもあるが、製造業に限らず観光も高成長のアジアがカギだ。(大畑滋生)=1面参照


湯布院・太宰府外国人客の7割
 大分・湯布院の高級旅館ほてい屋。21日、7組の客のうち6組が韓国人だった。広告会社に勤める全相旭さん(31)は「田舎の風景や、伝統的な家屋はすごくいい」。
 平均して3割が韓国から。インターネットの韓国人向けサイトに茅葺きの客室や近くの里山の様子を載せて反響を呼び、取引する現地の旅行会社は11社を数える。
 団体旅行が個人旅行へと広がる韓国客を取り込んだ。麻生雅憲社長は「日本人だけ相手にしていたら尻すぼみになる」と話す。
 副題で「訪日外国人観光の新段階」とうたった白書は、九州・山口の観光地を韓国客が支える様子を紹介する。外国人客のうち韓国からは湯布院、太宰府が7割超。別府、阿蘇山、下関なども軒並み過半数を占める。韓国客の日本での行き先も福岡、大分、熊本の3県がトップ10に入る。
 2010年に九州・山口を訪れた外国人客は前年より5割以上多い102万人程度と見られている。中国や韓国は、リーマン・ショック後の世界不況からの回復が比較的早かったためだ。両国とも日本の繁忙期とは違うサイクルで旅行客が動く。稼働率の安定にもつなげられる。
 韓国側の動きもある。太邱市のリゾート開発企業亀尾関発はプリンスホテル系の3ゴルフ場に続き、宮崎県日南市のゴルフ場とホテルを昨春買収。定期便を使うだけでなくチャーター便も飛ばして旅行客を運ぶ。
 韓国資本のゴルフ場やホテルは九州に31力所。地元との連携も欠かせない。日南のホテルの田畑博之支配人は「日本人も来やすい環境をつくり、食材の購入や雇用で地域に貢献する姿勢が大切だ」と話す。
 九州経済は地の利を生かしたアジア向けなど輸出比率が高いのが特徴。九経調の八尋和郎情報研究部長は「アジアの成長を観光にも取り込む必要がある」と指摘する。


台湾客は九州離れ
 韓国や中国からの観光客は強みとなるものの、依存しすぎればリスクが膨らむ。
 アジア経済は高い成長を誇る一方で、景気や為替の変動が大きかったり、領土問題で世論が大きく動いたりする。201O年に中国人の団体客11万人が突然キャンセルしたのは記憶に新しい。アジアの通貨危機の例もある。「あまり頻りすぎると危ない」との思いは共通だ。
 どっと人が押し寄せれば、離れる足がはやくなる可能性もある。台湾からの訪日客の訪問先は1999年、福岡、長崎、沖縄の3県がトップ10に入ったが、09年は福岡が10位に残るのみ。九経調は「台湾では珍しい雪や広大な花畑などで北海道がイメージづくりに成功した。九州は統一的なイメージが出来なかったのが原因だ」と分析する。