瀬尾つかさ『調停少女サファイア 1』

調停少女サファイア1 (富士見ファンタジア文庫)

調停少女サファイア1 (富士見ファンタジア文庫)

 世界観がおもしろい。展開もテンポよく情報が提示されて、読みやすい。詰め込み過ぎず、薄すぎず、陰謀と紛争を調停していく。キャラもはっきりと立っていて、分かりやすい。竜としてまっすぐあろうとするが、力が足りていないエオン。日常生活は完全に無能だが、知識と魔術に卓越し、政治活動に天才的な手腕を発揮するサファイア。二人の関係が非常にいい。
 神々が僕としてさまざまな種族を創り、竜たちがそれらの紛争を調停する世界。4000年前の大忘却によって、神々は消え去り、竜も衰退して主人公のエオンが最後の一人となっている。で、世界にはさまざまな特性をもつ種族が存在し、生活を維持していく上でさまざまな紛争を起こす状況。それを竜と竜の調停者が調停する。さまざまな種族がいて、たがいに抗争や交渉を行う世界という点では、ゲートワールドシリーズに近い雰囲気があると思った。あと、ケンタウロスウンディーネ、丘ドワーフ、ヒューマンと、それぞれ身体能力も居住環境も違えているのが、こういう政治ネタを人間でやった場合のエグさを薄めて読みやすくしているように思う。実際には、作中でも大粛清をやったりしているわけだけど…
 今後の売れ行き次第で、話は大きくも小さくもなりそうなので、願わくば間延びしない範囲で、大きく展開して欲しいところだ。