笹本祐一『星のパイロット』

星のパイロット (朝日ノベルズ)

星のパイロット (朝日ノベルズ)

 昔、ソノラマ文庫から出ていた作品の再刊。地球への降下のところがずいぶん書き足されている。しかし、なんかいまいち元の文章とあっていない感じが。折角、小惑星探査衛星の故障で、回収してきたサンプルのカプセルの大気圏突入速度が速くて燃え尽きそうって、魅力的な要素が入ってきた割には、そこのところがうまく展開していない感じ。逆に、なんか浮いてしまっているように感じる。
 しかし、朝日ノベルズは価格が高いのが欠点だよな。新米宇宙飛行士が宇宙に飛び出す、そこに至るまでのディテールのリアルさとか、ガジェットの魅力なんかは、今でもおもしろいし、多くの人の手に取ってもらいたいものだが。
 あと、松浦晋也の解説の通り、この小説が出た時にはスペースシャトルがあのような結末を迎え、アメリカが人を宇宙に送る手段を持たなくなるなんて、考えもしなかったな。しかも、宇宙往還機はコストが高くなるばかり、旧来のカプセル型の方が有利って結論になるとは。