- 作者: 太田静六
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2010/12/01
- メディア: 単行本
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全体の構成としては、南部に残るローマが築いた城塞、盛土の築山に木製の柵を設置したモット・アンド・ベイリィ形式、そのモット上の砦を石造りにしたシェル・キープ形式、ローマ以来の技術を引き継ぐレクタンギュラー・キープ形式、13世紀ウェールズ北部にエドワード1世によって築かれたキープを持たない城、スコットランドの城、北アイルランドの城。紹介されている城の分布が、フランスと接する南部海岸、スコットランド国境地域、ウェールズ国境地域と、明確に軍事的緊張があった場所なのが、なるほどという感じ。
やはり、市壁まできっちり残っている都市が印象的だな。ヨーク市とか、コンウェイ市、カーナヴォン市など。特にウェールズの後二者は、城もキープを廃し、複数の塔で堅固に守る、立派な城だけに迫力。あるいは、ローマ植民都市の遺構がかなり残るポーチェスターとか。ポーチェスターは発掘とかされているのかな。
あとは、ウェールズ北部、グウィネッズを制圧するために築かれたフリント城、コンウェイ城、カーナヴォン城、ハーレック城、ボーマリス城がかっこいい。あるいは、フランスをにらんだ軍事拠点であり続けた、ドーヴァー城。中世から現代に至る、各種の防備施設が見られるのがおもしろい。ロンドン塔も、城としての構成が残っていてかっこいい。対照的なのがカーライル城。グーグルマップで観察すると、どうも、郭内に住宅がいくつも建っている模様。中世城郭の中に住むとか、何たる贅沢。
末尾に紹介される北アイルランドの城も興味深い。北海岸の岬上に営まれた見張りの城。ダンルース城は、それなりの規模で楽しい。あと、キャリングロード・ローの内湾沿岸にいくつも建てられた塔状住居Tower House。16世紀に、入植したイングランドの領主が、反乱に対する防御や権威を見せ付ける目的で建てた、石造りのキープ型住宅。7箇所ほどが紹介されているが、愛想も何もない、無骨さが魅力的。ジョルダン城館があるアードグラスの町には、他にも何軒か、塔状の建物が、ストリートビューで観察されたが、他にどのくらいあるのだろうか。