松尾剛次『中世都市鎌倉を歩く:源頼朝から上杉謙信まで』

中世都市鎌倉を歩く―源頼朝から上杉謙信まで (中公新書)

中世都市鎌倉を歩く―源頼朝から上杉謙信まで (中公新書)

 中世の鎌倉を、源氏将軍、北条氏時代、鎌倉府時代、上杉氏時代とその後にわけて、紹介する。武士の館は残りにくいため、結局、お寺の紹介が多くなるわなあ。政権のプロジェクトとしての寺社や一族の結集の拠点としてのお寺が必要とされたのだろうな。
 あと、鎌倉幕府崩壊後の鎌倉は、あまり紹介されないが、鎌倉府足利氏の拠点として、繁栄を続ける。東国を管轄するミニ幕府の拠点だったわけか。享徳の乱で、鎌倉公方が古河に移転したあとも、関東管領上杉氏の重要な拠点であり、戦国時代になっても関東の覇者が「関東管領」のタイトルを手にするための重要な場であり続けた。北条氏や上杉謙信がここで関東管領の職につく儀礼を行った。一方で、16世紀になると、小田原など戦国大名の拠点都市に住人をとられて、衰退していく。


 有力な武家の屋敷には、周辺に家臣の屋敷が立地。門前集落的な様相を示すというのが興味深い。日本の中世都市は、門前集落の集積といった性格を示すのかな。