宮田登『江戸の小さな神々』青土社 1997 ISBN:4791755650

江戸の小さな神々

江戸の小さな神々

読むのにかなり時間がかかったので、前の方を忘れかけている…
それはさておき、江戸の庶民の信仰をさまざまな面から照射した本書はなかなか興味深かった。特に第1部「江戸の地霊」、第3部「江戸の他界」が個人的に面白かった。
第1部「江戸の地霊」では土地開発に伴う怪異、怪異やそれらの伝承のトポグラフィーを扱っている。バブルが崩壊した今でも「六本木ヒルズ」など巨大開発は枚挙暇がない。熊本でも、熊本駅前の再開発や各地のマンション建設など、それまでの歴史の積み重ね、生活の痕跡を完全に消し去ってしまう開発が次々と行われている。このような状況に対して、土地の聖性を認める考え方がなんらかの対抗手段にならないか、そんなことを考えさせられた。
第3部「江戸の他界」では山岳信仰と代参講の形成について論じている。これらの信仰は最終的に近代の教派神道に合流するのだが、その現在まで続く、民俗信仰的な側面が興味深い。