西村幸夫『路地からのまちづくり』途中で返却

路地からのまちづくり

路地からのまちづくり

返却期限が迫ってきたので、残念ながら最初のほうを読んだだけでおしまい。

 都市計画的な視点で見ると、路地には次のような評価が下されるのが一般的である。すなわち、

  • 計画的な道路システムの下位に位置づけられるサブシステムである。
  • 道路法や道路構造令などの規定・規格に適合しない規格以下の道である。
  • その多くは自然発生的に形成されている。
  • それゆえ多くの路地は迷路性、回遊性があり、個性的である。
  • 路地は人間の歩くスピードを前提として形成されているので、当然ながらヒューマンスケールが貫徹している。
  • そのため、仕掛けが細やかで、スローな暮らしによく適している。コミュニティの基盤ともなっている。
  • 反面、自動車交通には全く対処できない道路である。
  • したがって防災上の問題を孕んでおり、緊急車両の通行にも支障を来たす問題児である。

 こうした評価と近年の一般社会における路地見直しの風潮とをどう折り合わせることができるのだろうか。
 路地に対して与えられる前記のような一般的評価を裏返すと、今日の基準で一般的に望ましいとされる「常識的な」道路の姿が浮かび上がることになる。それは次のようなものである。

  • 道路は基本的に出発地から目的地に至る移動の際に利用する都市施設である。
  • したがって、道行き自体は目的ではなく、いかにして快適かつ効率的に目的地へ到達することに寄与するかが重要になる。
  • したがって上記目的を達成するために、道路は周到に計画された方がよい。
  • 移動手段は様々であるが、いずれの手段も基本的に排除されてはならない。
  • 緊急車両の通行を可能とし、地域の防災や安全に寄与するものであるべきだ。
  • 自動車交通をスムーズに受容することによって高速による移動を可能にすることが重要となる。
  • 計画にあたっては、安全性に考慮し、道路法や道路構造令などの規定・規格に適合しているべきである。
  • そのような道路は全国共通の仕様となる。
  • したがっれ、そのような道路がつくりだす景観には秩序があり、街路風景は似通っている。

 よくよく眺めてみると、上記の評価項目は20世紀の都市計画そのものの評価項目でもあるということができる。つまり、均質的画一的であり、かつ機能的計画的であることが善なのである。この時、主として計画対象として意識されているのは歩行者ではなく自動車であり、緊急車両である。モビリティの増大が善であり、それは主として自動車交通によって達成されるという前提がある。さらにいうと、道路は常に利用者のための空間であり、施設である。そこには道路を媒介として生まれているコミュニティを評価する視点が欠落している。道路は使われるだけでなく、生活者によって生きられるものなのだ。幅員の狭い路地となるとその意味合いはさらに強くなる。
p.11-12

少なくとも、交通手段としての道と生活空間としての道を分ける発想が、法律にも適用されるべきだと思う。
個性的な道というのは、車に乗っている人間には関係ないかもしれないが、自転車や歩きで通る人間には重要だと思う。幹線道路やマンションが立ち並んだ道なんざ、チャリで走るのが苦痛だっての。