日本人はなぜ市場競争が嫌いか〜大竹文雄・大阪大学教授に聞く(上)

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 最後まで読めば、話として分からなくはない。結局、著書を読まなくては、きちんとした評価はできないが。ここでは、この記事に限っての暫定的な疑問点を列挙。
 第一に、今までの実践の問題。市場主義が受け入れられない理由は、端的に言って制度をデザインする人間が信用できないということだろう。実際、市場主義者のチャンスであった小泉政権期に、「質の低い市場」の横行を許し、それに対する批判を欠いたのは誰か。政策担当者、企業などの利害関係者、政策に対して意見すべき経済学者、それぞれが責任感を欠いたことが現在の反動を呼んでいる根本的な原因だろう。それに口を拭う議論はどうだろう。実際のところ、大企業等の先に有利な条件を持っているプレイヤーが、一方的に有利になる市場政策がとられてきたわけで。
 第二は公共的な機能の問題。自営業者など、「既得権」が担ってきた公的な役割をどう組み替えるのか。そこをこそ具体的に論じる必要がある。国レベルの機能だけでなく、地域の活動(町内会など)、談合によって市場を維持してきた地場の建設業者が防災や目の届かないところの監視などの役割を担い、品質の維持も(ずいぶん怪しいが)担ってきた。そのような、機能をどう組み替えていくか。そこに深く突っ込んだ議論をしていかないと、実際の政策議論としての有効性を持ち得ないのではないか。
 三番目に、市場競争のメリットを消費者として享受できると述べているが、我々は消費者であると同時に、生産者であることを忘れていないか。消費者としてのメリットが、生産者としてのデメリットを上回る状況が昨今の状況だと思うのだが。それこそ、大学の教授という既得権の享受者であるからこその、他人事のような議論に思われるが。ディシプリンとの一貫性を考えるなら、経済学部は全部任期制にして、「自由な競争」にさらすべきだよね。
 なんか経済学の議論って胡散臭いというか、一面的だなと感じる。様々な慣行や機能の束をどう組み替えるか。そのような視点が欠けているように思う。


追記:イノベーションってのは、土俵をぶち壊す行為なのだから、むしろ規制の体系としての市場とは相性が悪いような気がする。