土橋真二郎『アトリウムの恋人』

アトリウムの恋人 (電撃文庫)

アトリウムの恋人 (電撃文庫)

 東京をそっくり仮想化し、それによって様々な用途に利用される「東京スフィア」。その仮想空間そのものは、誰のものでもなく、自由に利用できる空間となっていた。そこは、無法空間としていろいろな人が集っていたが、バグの集積によって崩壊し、利用不可能となっていた。
 ヒロインの青原遙花は、身に覚えのない東京スフィアのログインチケットを自室から発見し、それがどのようなものかを探るために、オンラインゲームのサークルを立ち上げる。主人公たちは、サークル内で遠巻きにしながら、巻き込まれていく。
 主人公の前田など、遙花以外の登場人物が、なんか含むような言動をとり続けるのが、中盤以降、徐々に明らかにされていく。正直、情報の開示がもったいぶりすぎという感覚と、それが逆に読み進む推進力になったのと、両面がある。
 結末も含めて、気持ちいい話の作り方。