- 作者: 谷村大四郎,虚淵玄(ニトロプラス),Production I.G,(キャラクター原案)鳴子ハナハル
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2013/05/30
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
1話のレドがエイミーを拉致したあたりで、エイミーはレドがおびえていると見ていたのが興味深い。大勢に追い回されている小動物みたいだったという感想なのか。意外とクールに対応しているなと思っていたのだが。あとは、ベベルが姉以上に好奇心旺盛とか。姉弟でアーリーアダプター層なんだな。
レドとリジットの交渉での、思惑なんかも興味深い。
「滅亡を避けるためにヒディアーズと戦う」という人類銀河同盟の「使命」は、絶対最後にひっくり返されるな。
要するに、同じ人類の間で利害がかちあうという状況をレドは想定できていなかったのだ。
人類銀河同盟では、ヒディアーズと戦い、滅亡を回避するという唯一絶対の使命を全員が共有している。
だが、地球ではいくつもの立場や価値観が混在しているのだ。対立はいくらでも起りうるだろう。
襲われる側が黙っていないことは、海賊も承知している。その上で、抵抗の程度によって強行するときはする、退くときは退く。目的は殺戮でなく物資を奪うことなのだから、それはそれでひとつの歩み寄りの形であり、終わりのない殺し合いを避ける知恵だということか。
つまりレドは、そのバランスを崩してしまったのだ。p.183
まあ、過不足の無い説明って感じだな。人をなるべく殺さないという価値観を内面化し、共有することで、際限のない軍拡競争を防いでいると。そういう価値観が共有されている点で、あの世界は同じ文化圏に属していると言えるとは思うけど。逆に、人類銀河同盟内部でも、利害の対立はあるはずなんだが、そういう部分にはレドはアクセスできていないのだろう。