田中芳樹『西風の戦記:ゼビュロシア・サーガ』

西風の戦記―ゼピュロシア・サーガ

西風の戦記―ゼピュロシア・サーガ

 なつラノを腐海の底から召還しよう、その14。
 昔の田中芳樹。たぶんファーストコンタクトは『灼熱の竜騎兵』だけど、これが二番目か三番目くらいだと思う。普通に田中芳樹の架空世界戦記物。まあ、高校生二人が現代社会から飛ばされて、観察者として中心人物のすぐ近くにいること程度か。
 今となっては、それほど感銘を受けないけど、思春期だったあのころは「ここではないどこか」へ行くという物語そのものを必要としていたんだろうな。
 まあ、この歳になるといろいろとけちをつけたくなる。アポロニアとレオン=パラミデュースの決戦であるメッセンブリアの戦いのモデルは三十年戦争のブライテンフェルトの戦いだろうけど、鉄砲のない世界でカラコールはやっぱ無理なんじゃ。戦闘の経過が割りとそのまんま。あと、紙の技術を導入するならパルプから作る紙よりも、近世にヨーロッパで生産されていた麻のぼろ布を使った紙のほうが実用性があったと思う。